早期乳がんの術後化学療法において、治療サイクル間隔の短縮、あるいは同時投与ではなく逐次投与により用量強度を高めるレジメンは、他の原因による死亡を増加させることなく、乳がんの10年再発リスクおよび死亡リスクを低下させうることが、英国・オックスフォード大学のEarly Breast Cancer Trialists' Collaborative Group(EBCTCG)らの検討で明らかとなった。治療サイクルの間隔短縮や低用量の同時投与よりも、むしろ十分量の逐次投与による細胞傷害性化学療法の用量強度の増強は、有効性を高めるのではないかと考えられていた。Lancet誌オンライン版2019年2月7日号掲載の報告。
早期乳がん女性患者3万7,298例、患者レベルでのメタ解析を実施
研究グループは、早期乳がんにおける用量強化(dose-intense)化学療法と標準スケジュール化学療法の相対的な利点とリスクを検証する目的で、2週ごと投与vs.3週ごと投与、およびアントラサイクリン系とタキサン系の逐次投与vs.同時投与の比較試験について、患者レベルでのメタ解析を実施した。
主要評価項目は、再発と乳がん死で、年齢、リンパ節転移状態および試験で層別化した標準intention-to-treat log-rank解析により、dose-intense療法と標準スケジュール療法の初回イベント率(RR)を算出した。
特定された33試験のうち26試験から個々の患者データが提供され、無作為化された4万70例のうち3万7,298例(93%)がメタ解析に組み込まれた。大半の女性が70歳未満、リンパ節転移陽性で、抗悪性腫瘍薬の総使用量は2群で類似していた。コロニー刺激因子はdose-intense療法でより多く用いられていた。
dose-intense療法で、乳がん10年再発/死亡リスクが約10~15%低下
26試験全体では、乳がん再発率はdose-intense療法群が標準スケジュール療法群より低かった(10年再発リスク:28.0% vs.31.4%、RR:0.86、95%信頼区間[CI]:0.82~0.89、p<0.0001)。10年乳がん死亡率(18.9% vs.21.3%、RR:0.87、95%CI:0.83~0.92、p<0.0001)、および全死因死亡率(22.1% vs.24.8%、RR:0.87、95%CI:0.83~0.91、p<0.0001)も同様であった。再発のない死亡も、dose-intense療法群で減少が認められた(10年リスク:4.1% vs.4.6%、RR:0.88、95%CI:0.78~0.99、p=0.034)。
2週ごと投与と3週ごと投与を比較した7試験(1万4例)では、2週ごと投与で再発率が低下した(10年リスク:24.0% vs.28.3%、RR:0.83、95%CI:0.76~0.91、p<0.0001)。アントラサイクリン系とタキサン系の逐次投与と同時投与を比較した6試験(1万1,028例)では逐次投与で再発率が低く(10年リスク:28.1% vs.31.3%、RR:0.87、95%CI:0.80~0.94、p=0.0006)、投与間隔短縮と逐次投与を比較した6試験(6,532例)でも投与間隔短縮で再発率が低かった(10年リスク:30.4% vs.35.0%、RR:0.82、95%CI:0.74~0.90、p<0.0001)。
dose-intense療法における再発率低下は、エストロゲン受容体陽性および陰性患者のいずれにおいても顕著で(p<0.0001)、他の患者特性や腫瘍特性で有意差は確認されなかった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)