過去50年間の戦死者数は公表データの3倍以上?

提供元:ケアネット

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公開日:2008/07/11

 

戦争による死者数は、公式に発表されている数よりも実際にははるかに多いといわれている。ワシントン大学のZiad Obermeyer氏らの研究グループは、公衆衛生の統計手法を用いて、1960年代のベトナム戦争から2000年代のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争に至る、過去50年間の戦死者の正確な推計値を導き出した。BMJ誌2008年6月28日号(オンライン版2008年6月19日号)掲載より。

公衆衛生の手法を用いて戦死者数を割り出す




死亡率に関する調査データ分析では、抽出や検閲によるバイアスが起きやすいため、一般的な調査に用いられる、公衆衛生における健康度測定(WHS)のためにデザインされた手法――1世帯から回答者を1人選び、家族の全原因死亡を聞く――が用いられた。

得られた推計死亡数を、ウプサラ大学/平和研究所(PRIO)の共同調査データベースにある推計値と比較し、より正確な推計値を導き出す作業が行われた。

集められたデータは、2002~2003年に行われたWHSで、その死が戦傷によるものかどうかを含めて、各世帯から家族の死亡に関するデータが集められた。

主要評価項目は、13ヵ国の50年間の戦争による推計死亡数。

13ヵ国で約540万人




1955年から2002年までの調査に基づくデータから、13ヵ国で約540万人の戦死者数(95%信頼区間:300 ~870万人)が導き出された。

最少はコンゴ民主共和国の7,000人、最多はベトナムの380万人。直近となる1995年~2002年の調査データからは、調査対象13ヵ国の戦死者数は毎年36,000人(95%信頼区間:16,000~71,000人)であることが示された。

一方、ウプサラ/PRIOの調査データでは、このわずか3分の1の数しか示されなかった。WHSのデータとの照合が可能な直近10年となる1985~1994年の全世界の戦死者数は、毎年378,000人と推計された。

Obermeyer氏は「平時における家族の既往歴に関する調査データを用いることで、戦争による死亡率を過去にさかのぼって推計することができる」と述べるとともに、「戦争による死者はこれまで推計されていたよりもはるかに多く、また近年は戦死者数が減少しているとの説もあるが全く根拠がない」と結論している。