心停止への二次心肺蘇生(ACLS)で近年、アドレナリン(エピネフリン)とvasopressinの併用投与が行われている。それぞれを単独投与するより効果的だとされているからだが、臨床推奨にはエビデンスが乏しい。日本の119番に相当する、フランスの救急医療システムSAMUが多施設共同研究を行った結果は、「併用投与の転帰とアドレナリン単独投与の転帰とに差はない」と報告された。NEJM誌2008年7月3日号より。
成人患者2,894例を併用投与orアドレナリン単独投与に無作為割り付け
院外で心停止を起こした成人患者のうち、1,442例をアドレナリン1mg+vasopressin 40 IU併用投与群に、1,452例をアドレナリン1mg+プラセボ注剤投与群に無作為に割り付け比較検討された。自発循環の回復がみられない場合は、各薬剤組み合せで投与を続け、必要に応じてアドレナリンが追加投与された。併用群のほうが単独群より男性が多かったことを除き、両群のベースラインの特性は同等だった(P=0.03)。
主要エンドポイントは入院生存率、副次エンドポイントは自発循環の回復率と、退院生存率、良好な神経学的な回復および1年生存率とした。
入院生存率、自発循環回復率ともに有意差なし
入院生率存は、併用群が20.7%、単独群が21.3%で有意差はなく(相対死亡リスク:1.01、95%信頼区間:0.97~1.05)、自発循環回復率は同28.6%対29.5%(相対リスク:1.01、95%信頼区間:0.97~1.06)、退院生存率も同1.7%対2.3%(1.01、1.00~1.02)、1年生存率も同1.3%対2.1%(1.01、1.00~1.02)と有意差はなかった。退院時の良好な神経学的状態の回復率は同37.5%対51.5%(1.29、0.81~2.06)だった。
このため、院外心停止の二次救命処置で、vasopressinとアドレナリンを併用しても、アドレナリン単独投与の場合と比べて転帰が改善することはないと結論した。
(武藤まき:医療ライター)