“Depression Care for People with Cancer”と呼ばれる複合的な介入法は、専門的な医療サービスを受けている癌患者における大うつ病管理のモデルとなることが、スコットランドで実施された無作為化試験(SMaRT oncology 1)で示された。大うつ病は癌などの疾患に罹患した患者のQOLを著しく損なうが、その管理の指針となるエビデンスは少ないという。イギリスEdinburgh大学癌研究センターのVanessa Strong氏がLancet誌2008年7月5日号で報告した。
通常ケアと通常ケア+看護師による介入を比較
研究グループは、大うつ病の体系的なスクリーニング法と複合的な介入法を併用し、うつ病の管理とがん治療を統合した治療システムを開発した。
SMaRT(Symptom Management Research Trials)oncology 1は、癌患者の大うつ病の治療法としてデザインされた介入法である“Depression Care for People with Cancer”の効果を評価する無作為化試験。
2003年10月~2005年12月に、スコットランドの地域癌センターに6ヵ月以上の生存が見込まれ、大うつ病に罹患した200例の外来癌患者が登録された。平均年齢は56.6歳、141例(71%)が女性であった。99例が通常ケア群に、101例が通常ケア+介入群に無作為に割り付けられた。
介入は平均7つのセッションからなり、癌センターで癌専門看護師によって施行された。主要評価項目は、無作為化後3ヵ月の時点における自己報告によるSymptom Checklist-20(SCL-20)のうつ病スケール(0~4)の平均スコアの差とした。
介入群でSCL-20うつ病スコアが有意に低下
データが欠失した4例を除く196例について解析を行った。3ヵ月後における補正後のSCL-20うつ病スコアは、介入を行った群で0.34低下し有意差が認められた(95%信頼区間:0.13~0.55、p=0.002)。治療効果は、6および12ヵ月の時点でも持続していた。
介入により不安および疲労感の改善が見られたが、疼痛や身体機能の改善効果は認めなかった。質調整生存年(QALY)の1年の延長ごとに、新たに£5,278(US$1万556)のコストが発生した。
Strong氏は、「“Depression Care for People with Cancer”は、専門的な医療サービスに参加している癌をはじめとする疾患の患者における大うつ病管理のモデルとなることが示された」と結論し、「今後、SMaRT oncology 2、3において本介入法の費用対効果や、予後不良例にもベネフィットをもたらすか否かを評価する予定である」としている。
(菅野守:医学ライター)