2000~18年の大手製薬会社35社の収益性は、代表的な他業種の米国上場企業357社と比べて有意に高いが、その差について、会社の規模、会計年度、研究開発費を考慮すると、必ずしもそうとは断言できないというエビデンスが示された。米国・ベントレー大学のFred D. Ledley氏らによる検討の結果で、著者は「大手製薬会社の収益性に関するデータは、医療をより利用しやすくする根拠に基づく施策を作成するために重要とはいえるだろう」とまとめている。JAMA誌2020年3月3日号掲載の報告。
売上総利益、EBITDA、純利益を比較
研究グループは、大手製薬会社35社と、S&P 500種指数の該当企業357社について、2000~18年の年次会計報告書の横断研究を行った。利益率を比較し、大手製薬会社がその他業種の大企業と比べ、収益性が高いとするエビデンスを究明した。
主要アウトカムは、売上高と、年間収益の3つの指標である売上総利益(売上高-売上原価)、EBITDA(主事業からの税引き前利益:支払利息、税金、減価償却費、償却費を含まない収益)、純利益(すべての収益と支出の差)。2000~18年までの累積や、年間の利益率(マージン)を算出して比較した。
純利益マージン、大手製薬13.8%で他業種大手7.7%
2000~18年にかけて、大手製薬会社35社の合計累積売上高は11.5兆ドル、売上総利益は8.6兆ドル、EBITDAは3.7兆ドル、純利益は1.9兆ドルだった。
一方、S&P 500・357社の合計は、それぞれ130.5兆ドル、42.1兆ドル、22.8兆ドル、9.4兆ドルだった。
二変量回帰モデルによる解析の結果、大手製薬会社はS&P 500・357社に比べ、年間利益率の中央値は有意に高かった。総利益マージンは76.5% vs.37.4%(群間差:39.1%、95%信頼区間[CI]:32.5~45.7、p<0.001)、EBITDAマージンは29.4% vs.19%(10.4%、7.1~13.7、p<0.001)、純利益マージンは13.8% vs.7.7%(6.1%、2.5~9.7、p<0.001)だった。
ただし、会社の規模、会計年度を補正し、また研究開発費を報告している企業に絞った回帰モデルでの解析では、それらの差は縮小することが示された。総利益マージンの群間差は30.5%(95%CI:20.9~40.1、p<0.001)、EBITDAマージンの群間差は9.2%(5.2~13.2、p<0.001)、純利益マージンの群間差は3.6%(0.011~7.2、p=0.05)だった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)