心血管異常を見つけ突然死や症状悪化を防ぐために、スポーツ選手への事前スクリーニングは有効だとされる一方、ここ数十年にわたり臨床有用性が議論されてもいる。米国心臓協会は不支持の態度を示しているが、ヨーロッパ心臓病学会と国際オリンピック委員会は、イタリアで25年以上前から行われていることに注目し、若いアスリートへの事前スクリーニングは必要であるとの態度を表明した。本論は、イタリア・フィレンツェにあるスポーツ医学研究所のデータをフローレンス大学血栓治療センターFrancesco Sofiらが分析・検討した結果で、臨床有用性はあると報告された。BMJ誌2008年7月3日号より。
アスリート30,065例(男性23,570例)の5年間のデータを横断的研究
本研究は、スポーツ参加者に対して事前に心血管スクリーニングを実施することの臨床有用性を、大規模コホートで検討することを目的とした30,065例(男性23,570例)のアスリートを対象とする、5年間のデータの横断的研究。
主要評価項目は、12心電図の安静時と運動負荷時の結果とした。
30歳以上のアスリートで運動負荷試時の異常発見とリスク増加とに有意な関連
12心電図結果が異常だったアスリートは、安静時は1,812例(6%)、運動負荷時は1,459例(4.9%)。1,227例に、安静時は正常だったものの運動負荷時に異常が示された。
スクリーニング結果から、競技スポーツには不適格だとみなされるアスリートは196例(0.6%)だった。
心臓を理由に競技スポーツが不適格とされた159例の対象者のうち一定の割合の者について(n=126、79.2%)、安静時の12心電図では良性あるいはネガティブな所見だったが、運動負荷によって明らかな病理学的変化が示された。
影響を及ぼす可能性のある交絡因子を調整後にロジスティック回帰分析を行った結果、30歳以上の者について、運動負荷試験中に不適格な心臓所見が見出されたこととリスク増加とに有意な関連が認められた。
Sofi氏は、「競技スポーツに参加しようとしている選手への運動負荷試験は、心血管異常者の同定を可能とする」と結論するとともに、「スポーツマンの心血管イベント発生率を低下させるかどうかは、検査によって資格を剥奪された人々を追跡調査することによって示されるだろう」とした。