オーストラリアの開業医によって管理される急性腰痛症患者の予後を評価する研究が、ジョージ国際健康研究所筋骨格部門(オーストラリア)のNicholas Henschkeらによって行われた。「診療ガイドラインにあるほど予後良好ではない」と報告されている。BMJ誌オンライン版2008年7月7日号より。
170人の開業医らから集められた患者973例を1年間追跡
試験は1年間の患者コホート追跡調査で、オーストラリア・シドニーにあるプライマリ・ケア・クリニックから患者が集められ行われた。
追跡対象となった参加者は973例。市内170人の開業医、理学療法士、カイロプロテクターから、2003年11月から2005年7月までの間に、2週間以上痛みが持続し非特異的な腰痛症と診断された患者が集められた。平均年齢43.3歳、男性54.8%。
主要転帰は、参加者記入による初診時アンケートの結果を基線に、6週間後、3ヵ月後、12ヵ月後に回復度について聞き取りが行われた。回復度は仕事への復帰、機能回復、痛みの消散によって評価された。予後因子と回復までの時間の関連はCox回帰分析で検定された。
1年以内に回復したのは72%
12ヵ月時点まで追跡調査ができたのは97%。そのうち基線で仕事ができない状態だった患者で2週間以内に仕事復帰できたのは約半数。3ヵ月時点で仕事復帰できていたのは83%だった。
機能および痛みについてはより時間がかかり、機能回復までの時間の中央値は31日(25~37日)、痛みの消散までの時間の中央値は58日(53~63日)だった。
そして12ヵ月以内に完全に回復していたのは72%にすぎなかった。
高齢になるほど、また障害の程度、痛みの程度が重篤なほど、その持続期間は増す傾向にあり、回復により時間を要することも明らかとなっている。うつ感情やその持続の危険は、回復までにかかる時間と相関していた。
「プライマリ・ケアで急性腰痛症を管理されているこの患者コホートにおける予後は、診療ガイドラインで示されているほど良好ではない。大半の患者は回復までに時間がかかり、3分の1は1年以内に回復には至らないことが明らかとなった」と結論している。