非アテローム性心血管疾患・非糖尿病・スタチン非服用で、低比重リポ蛋白(LDL)コレステロールが上昇した70~100歳集団は、心筋梗塞やアテローム性心血管疾患イベントの絶対リスクが最も高いことが、デンマーク・オーフス大学病院のMartin Bodtker Mortensen氏らが行った、同国一般住民を対象とした大規模コホート試験「Copenhagen General Population Study(CGPS)」で明らかにされた。一方で、同70~100歳集団は、同イベントの発症を5年間で1件予防するための必要治療数(NNT)が最も低いことも示された。著者は、「本試験のデータは、増え続ける70~100歳集団の心筋梗塞およびアテローム性心血管疾患の負荷を軽減するために必要な予防戦略にとって重要なものである」と述べている。先行研究では、70歳以上のLDLコレステロール値上昇は同イベント発症リスク増大と関連していないとされていた。Lancet誌2020年11月21日号掲載の報告。
アテローム性心血管疾患・糖尿病、スタチン服用のない20~100歳を追跡
研究グループは先行研究の仮説を直近の70~100歳集団で検証するため、2003年11月25日~2015年2月17日に9万1,131例を対象に行われたCGPSの被験者データを解析した。被験者の年齢は20~100歳で、ベースラインでアテローム性心血管疾患や糖尿病がなく、スタチンを服用していない参加者を包含した。LDLコレステロール値は標準的な病院検査法を用いて測定された。
心筋梗塞およびアテローム性心血管疾患についてハザード比(HR)と絶対イベント率を算出し、5年間でイベント1件を予防するためのNNTを推算して評価した。
LDL-Cが1.0mmol/L増でMIリスク1.3倍、70歳以上で増幅顕著
被験者9万1,131例は2018年12月7日まで、平均7.7(SD 3.2)年追跡を受けた。その間に1,515例が初回心筋梗塞を、また3,389例がアテローム性心血管疾患を発症した。
心筋梗塞リスクは、LDLコレステロール値が1.0mmol/L上昇するごとに増大することが、全年齢集団において認められた(HR:1.34、95%信頼区間[CI]:1.27~1.41)。同増大の関連は、いずれの年齢群においてもみられ(HRは20~49歳:1.68、50~59歳:1.28、60~69歳:1.29、70~79歳:1.25、80~100歳:1.28)、70~100歳でもリスクの増大はみられた。
アテローム性心血管疾患リスクも、LDLコレステロール値が1.0mmol/L上昇するごとに増大することが、全年齢集団において認められ(HR:1.16、95%CI:1.12~1.21)、70~100歳でもリスクの増大はみられた(HRは70~79歳:1.12、80~100歳:1.16)。
心筋梗塞リスクは、LDLコレステロール値5.0mmol/L以上上昇が3.00mmol/L未満上昇に比べ増大することも認められた。80~100歳のHRは2.99(95%CI:1.71~5.23)、70~79歳では同1.82(1.20~2.77)だった。
LDLコレステロール値の1.0mmol/L上昇ごとの心筋梗塞発症率(件/1,000人年)は、70~100歳群で最大で、年齢が下がるにつれて減少した。心筋梗塞を5年間で1件予防するためのNNTは、全集団が中程度のスタチン療法を受けた場合、70~100歳が最小で(NNTは70~79歳:145、80~100歳:80)、年齢が下がるにつれて増加した(同60~69歳:261、50~59歳:439、20~49歳:1,107)。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)