75歳以上急性心不全、救急外来でのケアバンドルは生存退院を改善せず/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2020/12/10

 

 急性心不全を呈した75歳以上の高齢患者に対する、救急外来(ED)での早期硝酸薬急速静注を含むガイドライン推奨ケアバンドルの実施は通常ケアと比較して、30日時点で評価した生存退院日数の改善に結び付かなかったことが示された。フランス・ソルボンヌ大学のYonathan Freund氏らが、503例を対象に行った無作為化比較試験の結果で、JAMA誌2020年11月17日号で発表した。EDでの急性心不全患者に対する早期治療について、臨床ガイドラインの推奨は中等度のエビデンスのみに基づくものであり、ガイドラインの順守度は低いものとなっており、ガイドライン推奨ケア順守を改善する介入が、30日時点の退院および生存を改善するかを検討した。

ケアバンドルでは、誘発因子の管理も実施

 研究グループは、2018年12月~2019年9月にかけて、フランス15ヵ所のEDで、75歳以上の急性心不全患者を対象に、ステップウェッジ(stepped-wedge)法でのクラスター無作為化試験開始し、30日間追跡した(最終フォローアップは2019年10月)。

 全EDは4週間のコントロール期間後、2週間の介入期間ごとに介入ケアと対照ケアを切り替えて行うよう無作為に割り付けられた。

 介入ケアでは、臨床ガイドライン推奨のケアバンドルを実施。ケアバンドルの内容には、早期の硝酸薬急速静注、急性冠動脈症候群や感染症、心房細動などの誘発因子の管理や、中等量の利尿薬静注などが含まれた。対照ケアでは、現場の救急担当医の裁量に任せた治療が行われた。

 主要エンドポイントは、30日時点の生存退院日数だった。副次エンドポイントは、30日全死因死亡、30日心血管死、予定外再入院、入院日数、腎不全などだった。

30日全死因死亡、心血管死なども両群で同等

 503例(年齢中央値は87歳、59%が女性)が無作為化を受け(介入群200例、対照群303例)、502例が解析に含まれた。硝酸薬急速静注を、介入群では4時間以内に中央値27.0mg(四分位範囲:9~54)投与されたのに対し、対照群は同4.0mg(2.0~6.0)だった(補正後群間差:23.8[95%信頼区間[CI]:13.5~34.1])。誘発因子に関する治療が行われた割合は、介入群が対照群よりも有意に高率だった(58.8% vs.31.9%、補正後群間差:31.1%[95%CI:14.3~47.9])。

 主要エンドポイントの30日時点の生存退院日数は、両群とも中央値19日(四分位範囲:0~24)で、統計的有意差は認められなかった(補正後群間差:-1.9[95%CI:-6.6~2.8]、補正後比:0.88[0.64~1.21])。

 また30日時点で、死亡(8.0% vs.9.7%、補正後群間差:4.1%[95%CI:-17.2~25.3])、心血管死(5.0% vs.7.4%、2.1%[-15.5~19.8])、予定外再入院(14.3% vs.15.7%、-1.3%[-26.3~23.7])、入院日数中央値(8日vs.8日、2.5[-0.9~5.8])、腎不全(1.0% vs.1.4%)であり、両群で有意差はなかった。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 原田 和昌( はらだ かずまさ ) 氏

東京都健康長寿医療センター 副院長

J-CLEAR理事