進行性の肝細胞癌患者に有効な全身療法はないが、これまでの予備試験の結果、分子標的薬のソラフェニブ(商品名:ネクサバール、本年1月承認で国内では腎癌のみ適応)が、肝細胞癌にも有効である可能性が示されている。本論は、スペイン・バルセロナ大学のJosep M. Llovet氏らによる報告で、ソラフェニブの国際共同第III相臨床試験SHARPの結果。「ソラフェニブは生存期間を延長する」と報告されている。NEJM誌2008年7月24日号より。
602例の生存率と症状進行の時間を比較評価
全身療法を受けていない進行性肝細胞癌患者602例を、1日2回400mgのソラフェニブかプラセボの投与を受ける多施設共同二重盲検プラセボ試験に無作為に割り付けた。
主要項目は全生存率と症状進行の時間、副次的転帰は放射線学的な進行と安全性。予定された第2回中間解析の時点で、被験者のうち321例が死亡したため試験は中止されている。
生存期間と症状進行時間は3ヵ月延長
全生存率の中央値は、ソラフェニブ群10.7ヵ月に対してプラセボ群は7.9ヵ月だった(ソラフェニブ群のハザード比:0.69、95%信頼区間:0.55~0.87、P<0.001)。
症状進行までの期間の中央値はソラフェニブ群4.1ヵ月、プラセボ群4.9ヵ月で有意差はなかった(P=0.77)。放射線学上の進行までの期間の中央値は、ソラフェニブ群の5.5ヵ月に対してプラセボ群は2.8ヵ月だった(P<0.001)。
Llovet氏は「生存期間、進行までの期間は、ソラフェニブ群のほうが約3ヵ月長い」と結論している。
なおソラフェニブ群7人(2%)とプラセボ群2人(1%)には部分寛解が見られたが、両群とも完全寛解に至った患者はいなかった。また副作用の下痢、体重減少、手足の皮膚反応、低リン酸血症は、ソラフェニブ群のほうが頻度が高かった。
(武藤まき:医療ライター)