保健医療と医学に対する信用の失墜は、医学研究にとって厳しい影響を及ぼす。しかし、最近の国際的な調査によれば、少なくとも80%の人々は、医学研究の発展のために生体試料を提供することに好意的であるとされる。とりわけ、いち早くバイオバンク法が整備されたスウェーデン人の意識はより高いとされるが、ウプサラ大学(スウェーデン)のLinus Johnsson氏らのグループは、採取したサンプルの保存と研究目的での使用について、スウェーデンではどれぐらいの患者が拒絶または使用目的を制限しているのか、またそれがバイオバンク研究にとって脅威となるのかどうかを検討した。BMJ誌2008年7月10日号より。
提供拒否、同意を取り下げ数を年間140万症例の全国データで横断研究
スウェーデンにおける、生体試料のバイオバンクでの保存および研究目的での使用には、どれだけの人が反対しているのか、また過去どれだけの人が同意を取り下げたかを調べるため、2005年から2006年のバイオバンク登録データを基に横断研究が行われた。
拒絶した患者データは、全国21県のうち20県の年間140万症例のバイオバンク・サンプルから得た。
主要評価項目は、同意に対する事前の拒絶、確認された拒絶、そして同意の取下げの率とした。
いつでも取り下げられる仕組みがポイント
保管とサンプル使用のいずれに対しても同意を拒絶したのは、1/690例。不同意を示す書面に記入して拒絶の意思を示したのは1/1,600例だった。また、検体を破壊されたくないと使用制限を求めた患者は1/6,200例だった。さらに、事前同意はしたが、その後同意を取り下げた患者は1/19,000例だった。
Johnsson氏は「スウェーデンのバイオバンク研究への同意拒絶は珍しいことで、個人の利益と調査の利益は対立していない」と述べ、特にバイオバンクに対する脅威もなければ、研究の信用性を損なう恐れも認められないと結論した。そのうえで、「スウェーデンのヘルスケアシステムでは現在、潜在的に承諾、拒絶のいずれも有しているサンプルを使用することを余儀なくされており、デフォルトとして研究への承諾が含まれていないが、簡単に取り下げられる推定承諾の仕組みを備えたシステムは、人々の意向に沿ったものとなっているようだ」とした。