すべての抗菌剤が効かないとされる広範囲薬剤耐性結核(XDR-TB)は、資源に乏しく結核に悩まされている国など世界45ヵ国で報告されている。そのうちの一つ、ペルーにおける広範囲薬剤耐性結核患者に対する外来治療による管理と転帰を調査した米国・ハーバード大学医学部のCarole D. Mitnick氏らは、4~7剤併用と包括的な外来治療が有効であることを報告した。NEJM誌2008年8月7日号より。
個別の包括的治療を受けた患者810例を調査
1999年2月1日~2002年7月31日にかけてペルーの首都リマで、個別的な外来治療を受けた患者計810例を後ろ向きに調査した。患者たちは、薬物療法、手術、有害事象管理と栄養指導、心理・社会的サポートを含む無料の包括的な治療を紹介された。
患者のうち651例から分離株を得て、広範囲薬剤耐性結核の検査を行い、耐性を示さなかった5つ以上の薬剤を含む投薬計画が作成された。
管理下の包括治療で6割以上が治療完了か治癒
検査の結果、651例中48例(7.4%)が広範囲薬剤耐性結核で、残る603例は多剤耐性結核だった。
広範囲薬剤耐性結核の患者は、他の患者より多くの治療を受けていた(投薬計画数の平均値[±SD]:4.2±1.9対3.2±1.6、P<0.001)。また彼らの分離株は、より多くの薬剤に耐性を示した(薬剤数:8.4±1.1対5.3±1.5、P<0.001)。なお広範囲薬剤耐性結核患者で、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に重複感染しているものはいない。
広範囲薬耐性結核患者は連日、管理下でサイクロセリン、注射薬、フルオロキノロンを含む多剤併用治療を受けた(平均薬剤数:5.3±1.3)。
治療を完了したか治癒した患者は、広範囲薬耐性結核では29例(60.4%)で、多剤耐性結核患者では400例(66.3%)だった(P=0.36)。
これらを踏まえMitnick氏は、「HIV陰性の広範囲薬剤耐性結核患者は、以前に複数の結核治療を受けていても、外来で治癒できる」と結論している。
(武藤まき:医療ライター)