高LDLコレステロール血症治療薬として広範に用いられているスタチンは、低比重リポ蛋白(LDL)コレステロールを低下させ、心血管イベントを大幅に減少させる。高用量ほどコレステロール低下作用も大きいが、高用量で他の特定薬物と併用された場合、まれにミオパチーが生じて筋力が低下することがある。これに関して英国・オックスフォード大学のゲノム全域研究チーム「SEARCH Collaborative Group」が「スタチン誘発性ミオパチーと強く関連する遺伝子変異を同定した」との報告が、NEJM誌2008年8月21日号(オンライン版2008年7月23日号)に掲載された。スタチン療法に際して遺伝子検査を行うことで、スタチン用量を個別化し安全性を向上できる可能性があるとしている。
患者90例と対照85例のゲノム全域連鎖を解析
ミオパチーと確認されたか初期症状の患者90例と、対照群85例に対して、約30万種類のマーカーの使用と精密マッピング追加することで、ゲノム全域連鎖解析を実施した。対象者全員が、1万2,000例が参加した別の試験の一環として、シンバスタチンを1日80mg服用していた。
結果の再現性は、参加者2万例の試験(シンバスタチン1日40mg投与)で試された。
SLCO1B1内の変異体確認でスタチン治療の安全性向上も
これにより、12番染色体上にある遺伝子
SLCO1B1内の一塩基多型(SNP)rs4363657が、ミオパチーと強く関連することが示された(P = 4×10(-9))。
SLCO1B1は有機陰イオントランスポーターOATP1B1をコード化し、それがスタチンの肝取り込みを調整することが知られている。スタチン代謝に関連している非同義rs4149056 SNPと、非コードrs4363657 SNPはほぼ完全に連鎖不平衡だった(r(2)= 0.97)。
対象集団におけるrs4149056 C対立遺伝子の有病率は15%で、ミオパチーのオッズ比は、C対立遺伝子1コピーにつき4.5(95%信頼区間:2.6~7.7)、CCホモ接合体とTTホモ接合体の比較では16.9(4.7~61.1)だった。ミオパチー症例の60%以上は、C変異体によると考えられる。ミオパチーとrs4149056の関連は、シンバスタチン毎日40mg投与試験で再現され、rs4149056とシンバスタチンのコレステロール低下作用との関連も示された。他のいかなる領域のSNPも、ミオパチーとの明らかな関連を示さなかった。
これらを踏まえ研究グループは「スタチン誘発性ミオパチーのリスク増加と強く関連する
SLCO1B1で、よく見られる変異体を確認した。これらの変異体の遺伝子型が判明すれば、スタチン治療をより安全で効果的に実施する一助になる可能性がある」と結論している。
(武藤まき:医療ライター)