身体活動が高齢者の認知機能低下を改善する

提供元:ケアネット

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公開日:2008/09/16

 

身体活動が認知機能低下のリスクを低減することは、多くの観察研究が示しているところだが、エビデンス(無作為試験に基づく)は十分ではない。オーストラリア・メルボルン大学のNicola T. Lautenschlager氏らが、1つのエビデンスとなる研究成果を報告した。JAMA誌2008年9月3日号より。

24週間にわたる身体活動プログラムの効果を測定




本研究はオーストラリア西部の大都市パースにおいて、2004~2007年にかけて実施された。自ら記憶に問題があると申し出たが、認知症の基準は満たさない50歳以上の被験者311例に対して、試験適格のスクリーニングを行い、170例を(不適格89例と辞退52例を除いた)、24週間にわたって教育・通常ケアを受ける群と、在宅の身体運動プログラムを受ける群に無作為に割り付けた。このうち138例が18ヵ月間の評価を終了。評価にあたって認知機能の査定担当者が、被験者集団の構成員が特定できないよう配慮された。

主要評価項目は、「アルツハイマー型認知症評価尺度」の変化と、18ヵ月後の「認知度Subscale(ADAS-Cog)」のスコア(possible range:0~70)とした。

通常ケア群の認知度が悪化したのに介入群では改善




ITT解析(包括解析)の結果、介入終了時点のADAS-Cogスコアは、介入群では0.26ポイント(95%信頼区間:-0.89~0.54)改善したが、通常ケア群は逆に1.04ポイント(0.32~1.82)悪化。介入群と対照群の間の転帰尺度の絶対差は、-1.3ポイント(-2.38~-0.22)だった。

18ヵ月後のADAS-Cogスコアは、介入群では0.73ポイント(-1.27~0.03)、通常ケア群は0.04ポイント(-0.46~0.88)改善した。

「単語の思い出し遅延度」と「臨床的認知症尺度」の合計指標はわずかに改善されたが、「単語を完全にすぐに思い出せる」「計数コードの正確性」「流暢に話せる」、またベックのうつ評価スコア、SF-36(Medical Outcomes 36-Item Short-Form)評価尺度による身体面・精神面には、有意な変化は見られなかった。

これらを踏まえてLautenschlager氏らは「記憶障害の自覚がある年配者を対象とした本研究では、6ヵ月間の身体活動プログラムは、18ヵ月間の追跡調査期間中、適度な認知改善効果を提供した」と結論している。

(朝田哲明:医療ライター)