致命的な初回不整脈イベントを防ぐ一次予防を目的として植込み型除細動器(ICD)を装着した心不全患者は、ICDの作動による電気ショックを受ける可能性がある。ICD治療の長期予後に関する研究を行っていたワシントン大学(米国)のJeanne E. Poole氏らは、適切・不適切を問わず電気ショックを受けた患者の死亡リスクは、電気ショックを受けなかった患者より大幅に高くなることを報告している。NEJM誌2008年9月4日号より。
811例にICDを植込んで45週間追跡調査
試験は、「心不全による突然死に関する試験」(SCD-HeFT)に参加した患者を対象とし、無作為にICD治療群に割り付けた829例中811例にICDを装着し追跡調査を行った。
ICD作動による電気ショックのうち、心室性頻拍または心室細動発現後の電気ショックは「適切」と判断し、その他のICD作動による電気ショックは「不適切」とした。
中央値45.5ヵ月の追跡調査期間中、適切な電気ショックだけを受けた(適切ショック群)のは128例、不適切な電気ショックだけを受けた(不適切ショック群)のは87例、両方の電気ショックを受けた(両ショック群)のは54例で、合計269例(33.2%)が、少なくとも1回、ICDの電気ショックを受けた。
適切な作動では全死因死亡リスクが有意に上昇
ベースラインの予後因子で補正したコックス比例ハザードモデルで解析したところ、「適切ショック群」は、当該群以外の患者と比べて、全死因死亡リスク上昇との有意な関連が認められた(ハザード比:5.68、95%信頼区間:3.97~8.12、P<0.001)。
「不適切ショック群」も、当該群以外の患者と比べて、死亡リスク上昇との有意な関連が認められた(1.98、1.29~3.05、P = 0.002)。
「適切ショック群」で24時間以上生存した患者も、それ以後の死亡リスクは上昇したままだった(2.99、2.04~4.37、P<0.001)。
電気ショックを受けた患者のうち、最も頻度が高い死因は進行性心不全だった。
以上を踏まえPoole氏は「ICDを一次予防のために装着した心不全患者にとって、ICDの作動が適切だったかどうかを問わず、不整脈に対する電気ショックを受けた場合は、受けなかった場合より死亡リスクが大幅に高い」と結論している。
(武藤まき:医療ライター)