エストロゲンとプロゲストゲンの併用ホルモン補充療法(併用HRT)は、「血管運動症状(ほてり)や性機能、睡眠障害を改善する効果がある」とのWISDOM研究グループによる報告が、BMJ誌2008年8月21日号に掲載された。WISDOM(women’s international study of long duration oestrogen after the menopause)は、HRT療法の長期にわたる効果とリスクを評価する無作為化試験で、心血管疾患、骨折、乳癌を主要臨床転帰とし健康QOLについても評価が行われた研究。1999年に始まったが2002年に、当時発表された「women’s health initiative trial in 2002」の結果(心血管疾患への長期的効果はない)の影響もあり試験は中断され、健康QOLについても疑問符がつけられていた。
3ヵ国の閉経後女性3,721例を対象に二重盲検無作為化試験
二重盲検無作為化試験で行われたWISDOMは、英国(384)、オーストラリア(94)、ニュージーランド(24)の一般クリニックで、経年処理50~69歳の閉経後女性3,721例(子宮を有する)が参加して行われた。
参加者は、エストロゲンとプロゲストゲンの併用HRT群(n=1,862)と、プラセボ群(n=1,859)に無作為に割り付け。併用HRT群には、抱合型ウマエストロゲン0.625mg+酢酸メドロキシプロゲステロン2.5/5.0 mgが、1日1回1年間経口投与された。
健康QOLデータ(1年時点)が得られたのは、併用HRT群1,043例、プラセボ群1,087例だった。
主要転帰は、健康QOLおよびうつなど精神・心理的な健康具合。健康QOLは自己申告方式の健康アンケート(WHQ:women’s health questionnaire)で、精神面や身体面に現れる更年期障害は症状アンケート(symptoms questionnaire)、うつ病スケールCES-Dで評価。EuroQolと視覚アナログスケールで総健康QOL、総合QOLの評価が行われた。
血管運動症状、性機能、睡眠問題で有意な改善
1年時点で、プラセボ群と比較して併用HRT群に、小さくはあったが有意な改善が、WHQの9つの構成要素のうち3つ、血管運動症状(P<0.001)、性機能(P<0.001)、睡眠問題(P<0.001)で観察された。
また併用HRT群のほうがプラセボ群に比べて、顔面潮紅(P<0.001)、寝汗(P<0.001)、関節・筋肉痛(P=0.001)、不眠症(P<0.001)、腟乾燥(P<0.001)の症状に関する報告がわずかだが少なかった。逆に、乳房圧痛(P<0.001)、おりもの(P<0.001)についての報告は上回っていた。顔面潮紅は、試験開始時の併用HRT群 vs. プラセボ群は30% vs. 29%だったが、1年時点では9% vs. 25%となっていた。
その他の更年期症状、うつ、総合QOLの有意差は、1年時点では観察されなかった。
これらから研究グループは、「併用HRTは、閉経後女性の健康QOLを改善する」と結論している。