認知症患者の抗精神病薬使用、複数の有害アウトカムと関連/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2024/05/02

 

 50歳以上の認知症患者において、抗精神病薬の使用は非使用と比較し脳卒中、静脈血栓塞栓症、心筋梗塞、心不全、骨折、肺炎および急性腎障害のリスク増加と関連していることが、英国・マンチェスター大学のPearl L. H. Mok氏らによるマッチドコホート研究で示された。有害アウトカムの範囲は、これまで規制当局が注意喚起を行っていたものより広く、リスクが最も高かったのは治療開始直後であったという。BMJ誌2024年4月17日号掲載の報告。

50歳以上の認知症患者約17万4千例のデータを解析

 検討には、英国のプライマリケア研究データベースのClinical Practice Research Datalink(CPRD)AurumおよびGOLDのデータが用いられた。これらのデータベースは、入院、死亡、社会的格差など他のデータと連携している。

 1998年1月1日~2018年5月31日に、初回認知症診断日から1年以上CPRDに登録されている50歳以上の成人を対象とし(最初の認知症の診断コードが記録される以前に抗コリンエステラーゼ薬が処方されている患者、診断以前の1年間に抗精神病薬を処方されている患者は除外)、初回認知症診断日以降に抗精神病薬を使用した患者と、初回認知症診断日が同じ(または診断日から56日後まで)で抗精神病薬を使用していない患者(最大15例)を、incidence density samplingを用いてマッチさせた。

 主要アウトカムは、脳卒中、静脈血栓塞栓症、心筋梗塞、心不全、心室性不整脈、骨折、肺炎、急性腎障害とした。抗精神病薬使用期間で層別化し、抗精神病薬使用群と非使用群の累積発生率を用いて絶対リスクを算出。また、観察不能な交絡の可能性を検出するため、関連性のないアウトカム(陰性対照)として虫垂炎と胆嚢炎についても検討した。

 計17万3,910例(女性63.0%)の認知症成人が適格条件を満たし、試験に組み入れられた。認知症診断時の年齢は平均82.1歳(SD 7.9)、中央値83歳であった。このうち、研究期間中に抗精神病薬を処方された患者は3万5,339例(女性62.5%)であった。

肺炎、急性腎障害、静脈血栓塞栓症、脳卒中、骨折、心筋梗塞、心不全の順にリスクが高い

 抗精神病薬使用群は非使用群と比較して、心室性不整脈を除くすべてのアウトカムのリスク増加と関連していた。現在の抗精神病薬使用(過去90日間の処方)に関する有害アウトカムのハザード比(逆確率治療重み付け[IPTW]で調整)は、肺炎2.19(95%信頼区間[CI]:2.10~2.28)、急性腎障害1.72(1.61~1.84)、静脈血栓塞栓症1.62(1.46~1.80)、脳卒中1.61(1.52~1.71)、骨折1.43(1.35~1.52)、心筋梗塞1.28(1.15~1.42)、心不全1.27(1.18~1.37)であった。陰性対照(虫垂炎と胆嚢炎)については、リスク増加は観察されなかった。

 心室性不整脈と陰性対照を除くすべてのアウトカムの累積発生率は、抗精神病薬使用群において非使用群より高く、とくに肺炎の絶対リスクおよび群間リスク差が大きかった。抗精神病薬投与開始後90日間における肺炎の累積発生率は、抗精神病薬使用群で4.48%(95%CI:4.26~4.71)に対し、非使用群では1.49%(1.45~1.53)であり、群間リスク差は2.99%(2.77~3.22)であった。

(ケアネット)

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コメンテーター : 岡村 毅( おかむら つよし ) 氏

東京都健康長寿医療センター

上智大学

大正大学

J-CLEAR評議員