持続性身体症状(persistent physical symptoms:PPS)を有する成人に対して、自己管理の支援に重点を置き、症状に関する説明を強化した臨床的介入(symptom-clinic intervention)は、複数のPPSの改善をもたらすことが、英国・シェフィールド大学のChristopher Burton氏らが実施したプラグマティックな多施設共同無作為化並行群間比較試験「Multiple Symptoms Study 3:MSS3試験」で示された。先行研究で、複数のPPSを抱える人々は生活の質が低下し、医療を受ける機会も不足していることが示されているが、地域の総合診療医(GP)によるコミュニケーションの強化に重点を置いた介入が、PPSを改善するかは検討されていなかった。Lancet誌2024年6月15日号掲載の報告。
GPによるコミュニケーションを強化した臨床的介入と通常ケア単独を比較
研究グループは2018年12月6日~2023年6月30日の期間に、イングランドの4つの地域にある英国国民保健サービスの一般診療所108施設において、複数のPPSを有する(患者健康質問票[Patient Health Questionnaire-15:PHQ-15]スコアが10~20)18~69歳の成人を登録し、介入群または通常ケア群に1対1の割合で無作為に割り付けた。介入の性質上、被験者を盲検化することはできなかった。
介入群では、通常ケアに加えて、詳細な病歴や患者の経験に関する十分な聴取、症状についての合理的な説明を行い、患者が症状を管理できるよう最大4回の医療相談を実施した。
主要アウトカムは、無作為化後52週時点でのPHQ-15スコアとし、ITT解析で評価した。
52週時点のPHQ-15スコア、介入群12.2 vs.通常ケア群14.1、介入群で有意に改善
計354例が無作為化され、178例(50%)が介入群、176例(50%)が通常ケア群に割り付けられた。
52週時のPHQ-15スコア(平均±SD)は、介入群12.2±4.5、通常ケア群14.1±3.7であった。補正後スコアの群間差は-1.82(95%信頼区間[CI]:-2.67~-0.97)であり、介入群の統計学的に有意な改善が示された(p<0.0001)。
有害事象は、介入群36件、通常ケア群39件が報告された。非重篤な有害事象の発現率(群間差:-0.03[95%CI:-0.11~0.05])ならびに重篤な有害事象の発現率(群間差:0.02[95%CI:-0.02~0.07])に、統計学的な有意差は認められなかった。介入に関連する重篤な有害事象も認められなかった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)