2型糖尿病薬で高K血症リスクが低いのは?/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2024/07/05

 

 2型糖尿病患者において、SGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬はDPP-4阻害薬と比較して高カリウム血症のリスクが低いことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のEdouard L. Fu氏らによる同国内の3つの医療保険請求データベースを用いた解析結果で示された。SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬およびDPP-4阻害薬は、2型糖尿病の治療においてますます用いられるようになっているが、日常臨床における高カリウム血症の予防に関して、これらの薬剤の相対的な有効性は不明であった。著者は、「SGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬の各クラスにおける個々の薬剤で結果は一貫していることから、クラス効果が示唆される。このことは2型糖尿病患者、とくに高カリウム血症のリスクがある患者へのこれらの薬剤の使用を支持するものである」とまとめている。BMJ誌2024年6月26日号掲載の報告。

傾向スコアマッチングでSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬の高K血症の発症を比較

 研究グループは、2013年4月~2022年4月の3つの米国医療保険請求データベース(メディケア、Optum’s deidentified Clinformatics Data Mart、MarketScan)を用い、1対1の傾向スコアマッチングにより、新たに治療を開始したSGLT2阻害薬vs.DPP-4阻害薬(コホート1:77万8,908例)、GLP-1受容体作動薬vs.DPP-4阻害薬(コホート2:72万9,820例)、SGLT2阻害薬vs.GLP-1受容体作動薬(コホート3:87万3,460例)の3つのコホートを同定し解析した。

 解析対象は、2型糖尿病と診断され、過去365日間に比較対象である2種類の薬剤のいずれかを使用しておらず、年齢18歳以上(メディケアの場合は65歳以上)、コホート登録前に12ヵ月以上継続して保険に加入していた患者であった。

 主要アウトカムは、入院または外来における高カリウム血症の診断、副次アウトカムは、外来での追跡中における高カリウム血症(血清カリウム値5.5mmol/L以上)の発症、および入院または救急外来における高カリウム血症の診断とした。

SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬はDPP-4阻害薬よりリスクが低い

 SGLT2阻害薬による治療開始は、DPP-4阻害薬より高カリウム血症の発症率が低く(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.73~0.78)、GLP-1受容体作動薬との比較でも発症率がわずかに低下した(HR:0.92、95%CI:0.89~0.95)。GLP-1受容体作動薬の使用は、DPP-4阻害薬より高カリウム血症の発症率が低かった(HR:0.79、95%CI:0.77~0.82)。

 3年間の絶対リスクは、SGLT2阻害薬(4.6%)がDPP-4阻害薬(7.0%)より2.4%(95%CI:2.1~2.7)低く、GLP-1受容体作動薬(5.7%)がDPP-4阻害薬(7.5%)より1.8%(95%CI:1.4~2.1)低く、SGLT2阻害薬(4.7%)がGLP-1受容体作動薬(6.0%)より1.2%(95%CI:0.9~1.5)低かった。

 これらの結果は、副次アウトカム、および年齢、性別、人種、併存疾患、他の薬剤の使用、HbA1c値によって定義されたサブグループ間で一貫していた。SGLT2阻害薬ならびにGLP-1受容体作動薬のDPP-4阻害薬に対する絶対スケールでの有益性(率差)は、心不全、慢性腎臓病、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬を使用している患者で最も大きかった。
 DPP-4阻害薬と比較して高カリウム血症の発症率が低いことは、SGLT2阻害薬(カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン)およびGLP-1受容体作動薬(デュラグルチド、エキセナチド、リラグルチド、セマグルチド)の個々の薬剤で一貫して観察された。

(医学ライター 吉尾 幸恵)