心血管リスクの高い高血圧患者では、糖尿病や脳卒中の既往によらず、収縮期血圧(SBP)の目標を120mmHg未満とする厳格降圧治療は、140mmHg未満とする標準降圧治療と比較して、主要心血管イベントのリスクが低下したことが示された。中国・Fuwai HospitalのJiamin Liu氏らESPRIT Collaborative Groupが無作為化非盲検評価者盲検比較試験「Effects of Intensive Systolic Blood Pressure Lowering Treatment in Reducing Risk of Vascular Events trial:ESPRIT試験」の結果を報告した。SBPを120mmHg未満に低下させることが140mmHg未満に低下させることより優れているかどうかは、とくに糖尿病患者や脳卒中の既往患者でははっきりしていなかった。Lancet誌オンライン版2024年6月27日号掲載の報告。
主要アウトカムは、心筋梗塞、血行再建術、心不全入院、脳卒中、心血管疾患死の複合
研究グループは、中国の病院または地域医療機関116施設において、50歳以上の心血管高リスク患者(心血管疾患既往、または主要な心血管リスク因子を2つ以上有し、SBPが130~180mmHg)を、診察室SBPが120mmHg未満を目標とする厳格降圧治療群、または140mmHg未満を目標とする標準降圧治療群に、最小化法を用いて無作為に割り付けた。
主要アウトカムは、主要心血管イベント(心筋梗塞、血行再建術、心不全による入院、脳卒中、心血管疾患死の複合)で、ITT解析を実施した。
2019年9月17日~2020年7月13日に、1万1,255例(糖尿病患者4,359例、脳卒中既往3,022例)が厳格降圧治療群(5,624例)または標準降圧治療群(5,631例)に割り付けられた。平均年齢は64.6歳(SD 7.1)であった。
主要イベントの発生率は9.7% vs.11.1%
追跡期間中の平均SBP(最初の用量漸増期間3ヵ月を除く)は、厳格降圧治療群119.1mmHg(SD 11.1)、標準降圧治療群134.8mmHg(SD 10.5)であった。
追跡期間中央値3.4年において、主要心血管イベントは厳格降圧治療群で547例(9.7%)、標準降圧治療群で623例(11.1%)に認められた(ハザード比[HR]:0.88、95%信頼区間[CI]:0.78~0.99、p=0.028)。糖尿病の有無、糖尿病の罹病期間、あるいは脳卒中の既往歴による有効性の異質性は認められなかった。
重篤な有害事象の発現率は、失神については厳格降圧治療群0.4%(24/5,624例)、標準降圧治療群0.1%(8/5,631例)であり、厳格降圧治療群で高率であったが(HR:3.00、95%CI:1.35~6.68)、低血圧、電解質異常、転倒による傷害、急性腎障害については両群間で有意差は認められなかった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)