遠隔医療でのスクリーニング(無検査)と薬の郵送による中絶は、超音波検査を伴う対面診療を経ての処方・中絶と比較し、完全な中絶率に関して非劣性であり、有害事象の発現率は低かった。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のLauren J. Ralph氏らが、非劣性解析を伴う前向き観察研究の結果を報告した。米国では、遠隔医療およびミフェプリストン製剤の郵送を介するなど、診療履歴による適格性評価(無検査)を用いた中絶薬による中絶の利用希望が急速に拡大しており、その有効性と安全性に関するさらなるエビデンスが求められていた。JAMA誌オンライン版2024年6月24日号掲載の報告。
無検査+薬剤郵送の有効性と安全性を対面ケアと比較
研究グループは、2021年5月~2023年3月にコロラド州、イリノイ州、メリーランド州、ミネソタ州、バージニア州およびワシントン州の中絶ケアを提供する団体より参加者を募集し、15歳以上、妊娠70日まで、言語は英語またはスペイン語で、薬による中絶を希望する女性を対象に検討した。
参加者の女性と臨床医が選択したケアモデルとして、対象者を以下の3群に分けた。(1)無検査(遠隔医療)の適格性評価と薬の郵送(無検査+郵送群)228例、(2)無検査の適格性評価と薬の受け取り(無検査+受け取り群)119例、(3)超音波検査付き対面群238例。
有効性のアウトカムは、ミフェプリストン+ミソプロストールを投与および経過観察を繰り返す必要のない完全な中絶とした。安全性のアウトカムは1泊入院、手術、輸血など中絶に関連する重大な有害事象とし、患者調査と医療記録からデータを得た。
主要解析では、無検査+郵送群と超音波検査付き対面群を比較した。
有効率は94.4% vs.93.3%で非劣性を確認
参加者585例の平均年齢は27.3歳で、ほとんどが非ヒスパニック系白人(48.6%)または非ヒスパニック系黒人(28.1%)であった。妊娠期間の中央値は45日(四分位範囲[IQR]:39~53)で、群間に差はなかった(p=0.30)。なお参加者の91.8%で、アウトカムのデータを得られた。
有効率は、調整モデルにおいて、無検査+郵送群94.4%(95%信頼区間[CI]:89.6~99.2)、超音波検査付き対面群93.3%(88.3~98.2)であった。補正後リスク差は1.2(95%CI:-4.1~6.4)で、事前に規定された非劣性マージン5%を満たした。
重篤な有害事象は、1泊入院4件、輸血2件、緊急手術1件を含む参加者の1.1%(95%CI:0.4~2.4)に認められ、無検査+郵送群3例、超音波検査付き対面群3例であった。無検査+受け取り群では報告されなかった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)