ベイピング製品の長期使用、電子タバコの普及で増加/BMJ

イングランドの成人では、2013年から2023年にかけて長期のベイピング(vaping)が大幅に増加し、その多くが新しい使い捨て電子タバコ(e-cigarettes)の人気が高まった2021年に使用を開始していた。現時点での長期ベイピング者の半数は使い捨てデバイスを使用し、この増加は喫煙歴のある集団に集中しているものの非喫煙者でもとくに若年層で増加していることが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのSarah E. Jackson氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年7月17日号に掲載された。
イングランドの成人約18万人で、長期ベイピング普及率を調査
研究グループは、イングランドの成人におけるベイピングに関する詳細なデータを収集しているSmoking Toolkit Studyのデータを用いて、長期ベイピングの普及率の変化を調査した(Cancer Research UKの助成を受けた)。ベイピングは、充電式あるいは非充電式のデバイスで発生させた蒸気を吸入する行為で、この研究ではニコチン製品について調べた。解析には、2013年10月~2023年10月において年齢18歳以上の17万9,725人(平均年齢47.9歳、男性48.9%)のデータを使用した。長期(6ヵ月超)のベイピングの普及率を、全体、ベイピングの頻度(毎日、非毎日)別、主に使用したデバイスの種類(使い捨て、詰め替え式、ポッド式)別に解析した。
「使い捨て」は、使い捨ての電子タバコまたはベイピングデバイス(非充電式)、「詰め替え式」は、ニコチンを含有する液体を補充するタンクを備えた電子タバコまたはベイピングデバイス(充電式)など、「ポッド式」は、液体を充填済みの交換可能なカートリッジを使用する電子タバコまたはベイピングデバイス(充電式)とした。
毎日のベイピングが増加、喫煙歴ありだけでなく非喫煙者も
長期ベイピングを報告した成人の割合は、2013年10月の1.3%(95%信頼区間[CI]:1.1~1.5)から2023年10月の10.0%(9.2~10.9)へと非線形性に増加し、とくに2021年からの増加が顕著であった。この増加には、長期の毎日のベイピングが寄与しており、2013年10月の0.6%(95%CI 0.5~0.8)から2023年10月には6.7%(6.0~7.4)へと増えていた。
また、長期ベイピングの増加は喫煙歴を有する人で大きかった。現喫煙者では、長期ベイピングの割合が2013年10月の4.8%(95%CI:4.0~5.8)から2023年10月には23.1%(20.4~25.9)へと増加し、直近1年以内に完全に禁煙した元喫煙者では5.7%(3.4~9.2)から36.1%(27.6~45.4)へ、1年以上前に完全に禁煙した元喫煙者では1.4%(1.0~1.9)から16.2%(14.2~18.4)へといずれも大幅に増えていた。
一方、非喫煙者でも、長期ベイピングの割合は0.1%(95%CI:0.0~0.2)から3.0%(2.3~3.8)へ増加したが、喫煙歴を有する人に比べその割合は小さかった。
2021年3月以降「使い捨て」が急増、「詰め替え式」と同等に
年齢別の解析では、2023年10月の時点における全体の長期ベイピングの割合は高齢になるほど低く、65歳で4.3%(95%CI:3.6~5.2)であったのに対し、18歳は22.7%(19.2~26.5)であった。非喫煙者に限っても同様で、65歳で0.3%(0.1~0.6)であったのに比べ、18歳は16.1%(11.1~22.7)と高率だった。また、2013年10月~2021年3月の期間に限ると、ほとんどの長期ベイピング者が主に詰め替え式の電子タバコ、あるいは詰め替え式電子タバコのみを使用しており(2.5~3.3%)、使い捨てデバイスの使用者は少数(0.1%)であった。
これに対し、2021年3月以降は使い捨てデバイスによる長期ベイピングの割合が急激に上昇し、2023年10月には、主に使い捨てデバイス、あるいは使い捨てデバイスのみを使用する集団の割合は4.9%(95%CI:4.2~5.7)、主に詰め替え式の電子タバコ、あるいは詰め替え式電子タバコのみを使用する集団の割合は4.6%(4.0~5.3)とほぼ同じになった。ポッド型デバイスを用いた長期ベイピングも増加したが、相対的にまれな状態にとどまった。
著者は、「使い捨て電子タバコは若年成人にとって魅力的で、長期ベイピングの増加に大きく寄与しているため、若年層への訴求力を低下させるための規制強化対策が緊急に必要なことが示唆されるが、禁煙補助用のデバイスとして電子タバコを使用する人々の意欲をそぐことになるため慎重な対応を要する」「使い捨て電子タバコは1回限りの使用で、再利用できない部品が多いため環境への影響が大きく、全面禁止を求める声が大きい。英国政府は最近、この方針に従う意向を表明した」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)
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