中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎患者において、IL-23p19阻害薬リサンキズマブは寛解導入療法および維持療法として、プラセボと比較し臨床的寛解率を改善することが示された。ベルギー・リエージュ大学病院のEdouard Louis氏らINSPIRE and COMMAND Study Groupが、第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「INSPIRE試験」および「COMMAND試験」の結果を報告した。JAMA誌オンライン版2024年7月22日号掲載の報告。
導入療法、2用量の皮下投与による維持療法の有効性と安全性をプラセボと比較
導入療法試験「INSPIRE試験」は、2020年11月5日~2022年8月4日(最終追跡日2023年5月16日)に41ヵ国261施設で実施された。
中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎を有し、1種類以上の従来の治療、先進治療、またはその両方に不耐容または効果不十分で、リサンキズマブの前治療歴がない患者977例を、リサンキズマブ(1,200mg)群またはプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付け、0週、4週および8週に静脈内投与した。
主要アウトカムは、12週時の臨床的寛解(Adapted Mayoスコアの排便回数サブスコアが1以下でベースラインを超えない、血便スコアが0、内視鏡所見サブスコアが1以下で易出血性の所見がない)であった。
維持療法試験「COMMAND試験」は、2018年8月28日~2022年3月30日(最終追跡日2023年4月11日)に37ヵ国238施設で実施された。
維持療法試験では、導入療法試験において12週時に臨床的改善(Adapted Mayoスコアがベースラインから2ポイント以上かつ30%以上低下し、さらに血便スコアが1以下または1以上低下)を達成した適格患者584例を、リサンキズマブ180mg群、360mg群またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、8週ごとに52週にわたり皮下投与した。
維持療法試験の主要アウトカムは、52週時の臨床的寛解であった。
リサンキズマブ群の臨床的寛解率は導入療法で20.3%、維持療法で37.6~40.2%
導入療法試験の解析対象は975例(年齢42.1[SD 13.8]歳、973例中586例[60.1%]が男性、677例[69.6%]が白人)で、12週時の臨床的寛解率はリサンキズマブ群20.3%(132/650例)、プラセボ群6.2%(20/325例)であった(補正後群間差:14.0%、95%信頼区間[CI]:10.0~18.0、p<0.001)。
維持療法試験の解析対象は548例(年齢40.9[SD 14.0 ]歳、男性313例[57.1%]、白人407例[74.3%])で、52週時の臨床的寛解率は、リサンキズマブ180mg群40.2%(72/179例)、リサンキズマブ360mg群37.6%(70/186例)、プラセボ群25.1%(46/183例)であった。リサンキズマブ180mg群とプラセボ群の補正後群間差は16.3%(97.5%CI:6.1~26.6、p<0.001)、リサンキズマブ360mg群とプラセボ群の補正後群間差は14.2%(4.0~24.5、p=0.002)であった。
導入療法試験における主な有害事象は、リサンキズマブ群がCOVID-19(4.8%)、貧血(3.4%)、プラセボ群が潰瘍性大腸炎(10.2%)、貧血(6.5%)で、重篤な有害事象の発現率はそれぞれ2.3%および10.2%であった。
維持療法試験における主な有害事象は、潰瘍性大腸炎(リサンキズマブ180mg群13.0%、360mg群13.8%、プラセボ群14.8%)およびCOVID-19(180mg群8.8%、360mg群13.3%、プラセボ群11.7%)で、重篤な有害事象の発現は180mg群5.2%、360mg群5.1%、プラセボ群8.2%であった。
著者は、追跡期間が短期であったことから、「52週間の追跡期間を超えた有益性を確認するためには、さらなる研究が必要である」とまとめている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)