一般的に処方される経口抗菌薬の中には、マクロライド系薬と比較して救急外来受診または入院に至る重篤な皮膚有害反応(cADR)のリスクが高い薬剤があり、とくにスルホンアミド系とセファロスポリン系で最も高いことが、カナダ・トロント大学のErika Y. Lee氏らによるコホート内症例対照研究の結果で示された。重篤なcADRは、皮膚や内臓に生じる生命を脅かす可能性のある薬物過敏症反応である。抗菌薬はこれらの原因として知られているが、抗菌薬のクラス間でリスクを比較した研究はこれまでなかった。結果を踏まえて著者は、「処方者は、臨床的に適切な場合はリスクの低い抗菌薬を優先して使用すべきである」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年8月8日号掲載の報告。
経口抗菌薬のクラスと重篤なcADRの関連性について解析
研究グループは、2002年4月1日~2022年3月31日に、カナダ・オンタリオ州の行政保健データベースを用いて、コホート内症例対照研究を実施した。データソースは、65歳以上のオンタリオ州住民に処方された外来処方薬のデータを含むOntario Drug Benefit database、救急外来受診の詳細情報を含むCanadian Institute for Health Information(CIHI)National Ambulatory Care Reporting System、入院患者の診断と治療のデータを含むCIHI Discharge Abstract Database、オンタリオ州健康保険(Ontario Health Insurance Plan)データベースである。ICES(旧名称:Institute for Clinical Evaluative Sciences)でこれらのデータを個人レベルで連携し、分析した。
対象は、少なくとも1回経口抗菌薬を処方された66歳以上の患者で、このうち、処方後60日以内に重篤なcADRのため救急外来を受診または入院した患者を症例群、これらのイベントがなく各症例と年齢と性別をマッチさせた患者(症例1例当たり最大4例)を対照群とした。
主要解析では、条件付きロジスティック回帰分析を用い、マクロライド系抗菌薬を参照群として、抗菌薬のクラスと重篤なcADRとの関連を評価した。
スルホンアミド系とセファロスポリン系で重篤なcADRのリスク大
20年の研究期間において、症例群2万1,758例、対照群8万7,025例を特定した(両群とも年齢中央値75歳、女性64.1%)。
多変量調整後、スルホンアミド系抗菌薬が重篤なcADRと最も強く関連しており、マクロライド系抗菌薬に対する補正後オッズ比(aOR)は2.9(95%信頼区間[CI]:2.7~3.1)であった。次いで、セファロスポリン系(2.6、2.5~2.8)、その他の抗菌薬(2.3、2.2~2.5)、ニトロフラントイン系(2.2、2.1~2.4)、ペニシリン系(1.4、1.3~1.5)、フルオロキノロン系(1.3、1.2~1.4)の順であった。
重篤なcADRの粗発現頻度が最も高かったのはセファロスポリン系(処方1,000件当たり4.92、95%CI:4.86~4.99)で、次いでスルホンアミド系(3.22、3.15~3.28)であった。
症例群2万1,758例のうち重篤なcADRで入院した患者は2,852例で、入院期間中央値は6日(四分位範囲[IQR]:3~13)、集中治療室への入室を要した患者は273例(9.6%)で、150例(5.3%)が病院で死亡した。
なお、著者は研究の限界として、ICD-10コードを使用してcADRを特定したが重篤なcADR専用のコードはなく本研究固有の定義を作成したこと、cADRを引き起こす可能性のある非ステロイド性抗炎症薬などの市販薬の使用については調査できなかったことなどを挙げている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)