選択的ニューロキニン(NK)-1,3受容体拮抗薬elinzanetantは、中等度~重度の更年期血管運動神経症状(vasomotor symptoms:VMS)に対し有効で、忍容性も良好であった。米国・バージニア大学のJoAnn V. Pinkerton氏らが、第III相無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「OASIS 1試験」および「OASIS 2試験」の結果を報告した。更年期VMSに対する安全で効果的な非ホルモン治療が必要とされていた。JAMA誌オンライン版2024年8月22日号掲載の報告。
中等度~重度のVMSを有する女性をelinzanetant群とプラセボ群に無作為化
OASIS 1試験およびOASIS 2試験は、同一の試験方法により米国および欧州の異なる施設で並行して実施された(OASIS 1試験は2021年8月27日~2023年11月27日に米国、欧州、イスラエルの77施設、OASIS 2試験は2021年10月29日~2023年10月10日に米国、カナダ、欧州の77施設)。
対象は、中等度~重度のVMSを有する40~65歳の閉経後女性で、適格参加者をelinzanetant群(120mgを1日1回26週間経口投与)、またはプラセボ群(プラセボを12週間投与後、elinzanetant120mgを14週間投与)に1対1の割合で無作為に割り付けた。
主要エンドポイントは、ホットフラッシュを評価する電子日誌(electronic hot flash daily diary)で測定された、ベースラインから4週時および12週時までの中等度~重度VMSの頻度と重症度の平均変化量であった。重要な副次エンドポイントは、睡眠障害を評価する患者報告アウトカム(Patient-Reported Outcomes Measurement Information System Sleep Disturbance Short Form 8b:PROMIS SD-SF-8b)総スコアならびに更年期特有のQOL質問票(Menopause-Specific Quality of Life questionnaire:MENQOL)総スコアの、ベースラインから12週時までの変化量であった。
VMSの頻度と重症度、睡眠障害、更年期関連QOLがelinzanetant群で有意に改善
適格参加者がelinzanetant群(OASIS 1試験199例、OASIS 2試験200例)またはプラセボ群(同:197例、200例)に無作為に割り付けられた。参加者の平均(±SD)年齢はOASIS 1試験が54.6±4.9歳、OASIS 2試験が54.6±4.8歳であった。それぞれ計309例(78.0%)および324例(81.0%)が試験を完了した。
ベースラインにおける24時間当たりのVMS頻度(平均±SD)は、OASIS 1試験でelinzanetant群13.4±6.6、プラセボ群14.3±13.9、OASIS 2試験でそれぞれ14.7±11.1、16.2±11.2であった。また、ベースラインにおけるVMS重症度は、OASIS 1試験で2.6±0.2、2.5±0.2、OASIS 2試験で2.5±0.2、2.5±0.2であった。
elinzanetant群はプラセボ群と比較して、4週時および12週時のVMS頻度が有意に減少した。群間差は4週時がOASIS 1試験で-3.3(95%信頼区間[CI]:-4.5~-2.1、p<0.001)、OASIS 2試験で-3.0(-4.4~-1.7、p<0.001)、12週時がそれぞれ-3.2(-4.8~-1.6、p<0.001)、-3.2(-4.6~-1.9、p<0.001)であった。
同様にelinzanetant群はプラセボ群と比較して、4週時および12週時のVMSの重症度が改善した。群間差は4週時がOASIS 1試験で-0.3(95%CI:-0.4~-0.2、p<0.001)、OASIS 2試験で-0.2(-0.3~-0.1、p<0.001)、12週時がそれぞれ-0.4(-0.5~-0.3、p<0.001)、-0.3(-0.4~-0.1、P<0.001)であった。
重要な副次エンドポイント(睡眠障害、更年期関連QOL)についても、両試験においてプラセボに対しelinzanetant群で有意な改善が認められた。
elinzanetant群の安全性プロファイルは良好であった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)