中等症~重症の潰瘍性大腸炎、抗TL1A抗体tulisokibartが有望/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2024/10/15

 

 中等症~重症の潰瘍性大腸炎の治療において、プラセボと比較して抗腫瘍壊死因子様サイトカイン1A(TL1A)モノクローナル抗体tulisokibartは、臨床的寛解の達成率が高く、有害事象の発現状況は両群で同程度であることが、米国・マウントサイナイ医科大学のBruce E. Sands氏らARTEMIS-UC Study Groupが実施した「ARTEMIS-UC試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年9月26日号で報告された。

国際的な無作為化プラセボ対照第II相試験

 ARTEMIS-UC試験は、14ヵ国の施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第II相試験であり、2021年7月~2022年10月に参加者を登録した(Prometheus Biosciencesの助成を受けた)。

 年齢18歳以上、中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎の診断を受け、グルココルチコイド依存性であるか、潰瘍性大腸炎に対する従来治療または先進治療が無効であった患者を対象とした。被験者を、tulisokibart(1日目に1,000mg、2週・6週・10週目に500mg)を静脈内投与する群、またはプラセボ群に無作為に割り付けた。

 コホート1には、効果の可能性を評価する遺伝子診断検査の結果を問わずに患者を登録し、コホート2には、同検査で効果の可能性があると判定された患者だけを登録した。

 主解析はコホート1で行い、主要エンドポイントは12週の時点での臨床的寛解とした。臨床的寛解は、修正Mayoスコアの内視鏡サブスコアが0または1、直腸出血サブスコアが0、便の回数サブスコアが0または1で、ベースラインの値より大きくないことと定義した(3つのサブスコアはいずれも0~3で評価、スコアが大きいほど重症度が高い)。また、コホート1のうち効果の可能性があると判定された患者と、コホート2の患者を合わせた患者集団でも解析を行った。

効果の可能性がある患者集団でも有意に良好

 コホート1に135例を登録し、tulisokibart群に68例(平均[±SD]年齢40.4[±14.4]歳、女性34例[50%])、プラセボ群に67例(42.2[±16.3]歳、29例[43%])を割り付けた。

 コホート1における12週時の臨床的寛解の達成率は、プラセボ群が1%であったのに対し、tulisokibart群は26%と有意に優れた(群間差:25%ポイント、95%信頼区間[CI]:14~37、p<0.001)。

 また、コホート1では、内視鏡的改善や組織学的改善などのすべての副次エンドポイントに関して、一貫した有効性が示された。

 一方、効果の可能性があると判定された患者は2つのコホートを合わせて75例で、tulisokibart群が38例(平均[±SD]年齢37.3[±15.7]歳、女性20例[53%])、プラセボ群は37例(同38.6[±13.0]歳、13例[35%])であった。

 この患者集団における臨床的寛解の達成率は、プラセボ群が11%であったのに比べ、tulisokibart群は32%であり有意に良好だった(群間差:21%ポイント、95%CI:2~38、p=0.02)。

とくに注目すべき有害事象は感染症

 コホート1と2を合わせた患者集団における有害事象は、tulisokibart群で46%、プラセボ群で43%に発現した。重篤な有害事象は、それぞれ1例(1%)および7例(8%)に認めた。

 両群とも5%以上の患者で発現した有害事象としては、COVID-19がtulisokibart群で5例(6%)、プラセボ群で4例(5%)に、潰瘍性大腸炎の悪化がそれぞれ1例(1%)および9例(10%)に認めたのみであった。とくに注目すべき有害事象では、感染症が両群とも16例(18%)で報告された。

 著者は、「コホート1では、プラセボ投与後の臨床的寛解の割合が1%と低かったことから示唆されるように、治療抵抗性が高度な患者集団において、このような効果が確認されたことは注目に値する」と述べ、「これらの知見を総合的にみると、TL1Aの遮断は、中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎における新たな作用機序であり、先進治療歴の有無にかかわらず有効であることを示すエビデンスとなる」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 上村 直実( うえむら なおみ ) 氏

国立国際医療研究センター国府台病院 名誉院長

東京医科大学 消化器内視鏡学講座 兼任教授

J-CLEAR評議員