鼻炎は、アトピー素因の有無にかかわらず成人期発症の喘息の強力な予測因子であることが、地域住民ベースのプロスペクティブな縦断的研究で明らかとなった。喘息とアレルギー性鼻炎の密接な相関がいくつかの疫学および臨床研究で示されているが、その関連の本質はいまだ解明されていないという。フランス・国立保健医療研究所(INSERM)疫学部のRafea Shaaban氏が、Lancet誌2008年9月20日号で報告した。
4群に分けて8.8年間の喘息発症状況を解析
研究グループは、ヨーロッパの14ヵ国29施設が参加したEuropean Community Respiratory Health Survey(ECRHS)の8.8年にわたるフォローアップデータを用い、アレルギー性および非アレルギー性の鼻炎患者における喘息の発症状況について解析した。
ベースライン時に喘息のない20~44歳の6,461人を対象に、喘息の発症頻度を評価した。2度の調査を行い、その間に医師によって喘息と確定診断されたと報告した場合に「喘息発症」とした。「アトピー」は、皮膚プリック検査でダニ、ネコ、カビ(アルテルナリア、クラドスポリウム)、イネ科植物、カバノキ、ヒカゲミズ属、オリーブ、ブタクサが陽性の場合とした。
参加者はベースライン時に、対照群(非アトピー/鼻炎なし、3,163人)、アトピー単独群(アトピー/鼻炎なし、704人)、非アレルギー性鼻炎群(非アトピー/鼻炎あり、1,377人)、アレルギー性鼻炎群(アトピー/鼻炎あり、1,217人)の4群に分けられた。4群の喘息発症についてCox比例ハザードモデルによる解析を行った。
鼻炎は成人喘息を強く予測、鼻炎治療の喘息予防効果を示すには介入試験が必要
8.8年間の喘息の累積発症率は2.2%(140イベント)であった。その内訳は、対照群1.1%、アトピー単独群1.9%、非アレルギー性鼻炎群3.1%、アレルギー性鼻炎群4.0%であり、有意差が認められた(p<0.0001)。
国別、性別、ベースライン時の年齢、BMI、1秒量(FEV1)、総IgE値対数、喘息の家族歴、喫煙で補正後の対照群との比較におけるアトピー単独群の喘息発症の相対リスクは1.63(95%信頼区間:0.82~3.24)と有意差を認めなかったが、非アレルギー性鼻炎群は2.71(1.64~4.46)、アレルギー性鼻炎群では3.53(2.11~5.91)といずれも有意な差が見られた。
アレルギー性鼻炎群のうちダニに対する感受性を有する患者のみが、他のアレルゲンとは独立に喘息リスクの増大と有意な相関を示した(相対リスク:2.79、95%信頼区間:1.57~4.96)。
著者は、「アトピー素因がない場合でも、鼻炎は成人期発症の喘息の強い予測因子である」と結論し、「この結果は、鼻炎と喘息の因果関係を強く示唆するものだが、アレルギー性鼻炎の治療が喘息の発症を抑制すると結論するには介入試験で確証する必要がある」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)