IgA腎症で重度の蛋白尿を有する患者は、腎不全の生涯リスクが高いとされる。オランダ・フローニンゲン大学のHiddo J.L. Heerspink氏らALIGN Study Investigatorsは「ALIGN試験」において、IgA腎症患者の治療ではプラセボと比較してエンドセリンA受容体の選択的拮抗薬atrasentanは、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある蛋白尿の減少をもたらし、有害事象の発現は両群で大きな差はないことを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年10月25日号で報告された。
国際的な第III相無作為化試験の中間解析
ALIGN試験は、20ヵ国133施設で実施した第III相二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2021年3月~2023年4月に患者を登録した(Novartisの助成を受けた)。
年齢18歳以上、生検で証明されたIgA腎症で、尿中総蛋白排泄量が1日1g以上、推算糸球体濾過量(eGFR)が30mL/分/1.73m
2以上の患者を対象とした。被験者を、atrasentan(0.75mg/日)またはプラセボを132週間投与される群に無作為に割り付けた。
主要アウトカムは、ベースラインから36週目までの24時間尿蛋白-クレアチニン比の変化率とし、患者登録開始から270例のデータを、事前に規定された中間解析において評価した。
6週目には明らかな差
340例を登録し、このうち最初の270例を2つの群に135例ずつ割り付けた。270例の平均年齢は44.9歳、41.1%が女性であった。IgA腎症の平均罹患期間は5.6年、平均eGFRは58.9mL/分/1.73 m
2、24時間尿蛋白-クレアチニン比中央値は1,433であり、98.5%の患者がACE阻害薬またはARBを使用していた。
ベースラインと比較した36週目の尿蛋白-クレアチニン比の幾何平均変化率は、プラセボ群が-3.1%であったのに対し、atrasentan群は-38.1%であり、幾何平均群間差は-36.1%ポイント(95%信頼区間[CI]:-44.6~-26.4)と有意差を認めた(p<0.001)。
6週目には、プラセボ群と比較して、atrasentan群における尿蛋白-クレアチニン比の減少が明らかとなり、この状態が36週目まで持続した。
投与中止に至る体液貯留はなかった
36週の時点でのベースラインからの血圧の平均(±SD)変化量は、atrasentan群で収縮期が-3.94±11.90mmHg、拡張期は-4.25±8.96mmHgであり、プラセボ群ではそれぞれ2.67±12.25mmHgおよび2.25±10.70mmHgであった。また、36週目の体重の平均変化量はatrasentan群で-0.2±2.8kg、プラセボ群で-0.1±3.0kgだった。
2つの群で有害事象の発現率に大きな差はなかった(atrasentan群82.2% vs.プラセボ群84.7%)。頻度の高い有害事象は、COVID-19(20.7% vs.21.8%)、鼻咽頭炎(10.1% vs.5.9%)、末梢浮腫(8.9% vs.6.5%)であった。とくに注目すべき有害事象としては、体液貯留がatrasentan群11.2%、プラセボ群8.2%で報告されたが、試験薬の投与中止には至らなかった。また、明らかな心不全や重度の浮腫は発生しなかった。
著者は、「本試験で得られたatrasentanの有益性のデータは、対象が高リスクの患者集団(適切な支持療法にもかかわらずベースラインの尿中総蛋白排泄量が1日1g以上)で、安全性と副作用プロファイルが良好であったことを考慮すると、臨床的に意義のあるものと考えられる」としている。
(医学ライター 菅野 守)