カテーテルを用いた心房細動アブレーションを受け、脳卒中リスクが中等度~高度の患者において、経口抗凝固薬投与と比較して左心耳閉鎖術は、36ヵ月後の手技に関連しない出血(大出血および臨床的に重要な非大出血)のリスクが有意に低く、全死因死亡、脳卒中、全身性塞栓症の複合に関して非劣性であることが、米国・クリーブランド・クリニックのOussama M. Wazni氏らが実施した「OPTION試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年11月16日号に掲載された。
国際的な無作為化臨床試験
OPTION試験は、カテーテルアブレーションを受けた心房細動患者における左心耳閉鎖術の安全性と有効性の評価を目的とする国際的な無作為化臨床試験であり、2019年11月~2021年6月の期間に10ヵ国106施設で参加者を募集した(Boston Scientificの助成を受けた)。
CHA
2DS
2-VAScスケール(0~9点、高スコアほど脳卒中のリスクが高い)のスコアが男性≧2点、女性≧3点で、カテーテルアブレーションを受けた心房細動患者1,600例を登録した。これらの患者を、左心耳閉鎖術を受ける群(803例)、経口抗凝固薬の投与を受ける群(797例)に無作為に割り付けた。
ベースラインの全体の平均[±SD]年齢は69.6±7.7歳、女性が34.1%で、平均CHA
2DS
2-VAScスコアは3.5±1.3点、平均HAS-BLED(0~9点、高スコアほど出血のリスクが高い)スコアは1.2±0.8点であった。左心耳閉鎖術群は、98.8%(753/762例)でデバイスの留置に成功した。
副次エンドポイントも非劣性を達成、デバイス/手技関連合併症は23例
36ヵ月の時点でのITT集団におけるKaplan-Meier法による安全性の主要エンドポイント(手技に関連しない出血[ISTH基準の大出血および臨床的に重要な非大出血]、優越性を評価)の推定発生率は、経口抗凝固薬群が18.1%(137例)であったのに対し、左心耳閉鎖術群は8.5%(65例)と有意に低かった(ハザード比[HR]:0.44、95%信頼区間[CI]:0.33~0.59、優越性のp<0.001)。
また、36ヵ月時のITT集団におけるKaplan-Meier法による有効性の主要エンドポイント(全死因死亡、脳卒中、全身性塞栓症の複合、非劣性[非劣性マージン5%ポイント]を評価)の推定発生率は、左心耳閉鎖術群5.3%(41例)、経口抗凝固薬群5.8%(44例)であり、左心耳閉鎖術群の非劣性が示された(HR:0.91、95%CI:0.59~1.39、片側97.5%CIの上限値:1.8、非劣性のp<0.001)。
36ヵ月時の副次エンドポイント(ISTH基準による大出血[手技関連出血を含む]、非劣性[非劣性マージン5.25%ポイント]を評価)の発生率は、左心耳閉鎖術群3.9%(30例)、経口抗凝固薬群5.0%(38例)と、左心耳閉鎖術群の非劣性が示された(HR:0.77、95%CI:0.48~1.24、片側97.5%CIの上限値:1.0、非劣性のp<0.001)。
デバイスまたは手技に関連する合併症は、左心耳閉鎖術群の23例(うち1例は経口抗凝固薬群からのクロスオーバー)で発現した。12ヵ月後のデバイス関連血栓の発生率は1.9%だった。
著者は、「心房細動アブレーション施行時に左心耳閉鎖術を安全に行えるという事実は、長期間の経口抗凝固薬投与に代わる新たな選択肢をもたらす可能性がある」としている。
(医学ライター 菅野 守)