コリンエステラーゼ阻害薬ドネペジルは、アルツハイマー病患者の認知機能障害を改善するとされるが、行動障害に関する有益性については明らかになっていない。
キングズ・カレッジ・ロンドン附属精神医学研究所のRobert J. Howard氏らは、アルツハイマー病患者に共通してみられる興奮症状に対して、本剤が効果的かどうかを検証した。NEJM誌10月4日号掲載報告より。
1日10mgを12週投与、評価はCMAIスケールで
臨床的に明らかな興奮症状を呈し、短期の心理社会的な治療プログラムでも改善がみられなかった272例のアルツハイマー病患者を、ドネペジル10mg/日投与群(128例)とプラセボ投与群(131例)にランダムに割り付け行われた。投与期間は12週間。
12週時点の結果評価は、CMAIスケール(Cohen-Mansfield Agitation Inventory:スケールスコアは29~203。スコアが高いほどより興奮状態であることを示す)が用いられ、スコアの変化が測られた。
プラセボ投与群との有意差なし
基線から12週へのCMAIスコアの変化に、ドネペジル投与群とプラセボ群で有意差は見られなかった。変化の推定平均差(ドネペジル値-プラセボ値)は-0.06(95%信頼区間:-4.35~4.22)。
CMAIスコアが30%以上改善した患者は、プラセボ投与群で22/108例(20.4%)、ドネペジル投与群で22/113(19.5%)で、むしろプラセボ投与群のほうが0.9ポイント上回っていた(95%信頼区間:-11.4~9.6)。
両群スコアには、Neuropsychiatric Inventory、Neuropsychiatric Inventory Caregiver Distress ScaleまたはClinician's Global Impression of Changeの各スケールを用いても有意差はみられなかった。
Howard氏らは、この12週試験では、アルツハイマー病患者の興奮症状に対してドネペジルは効果がなかったと結論づけている。
(武藤まき:医療ライター)