経口フマル酸(BG00012)は再発寛解型多発性硬化症に対し優れた新規病変抑制効果と良好な安全性プロフィールを示すことが、ヨーロッパを中心に実施された多施共同試験で確認された。前臨床試験では、フマル酸ジメチルとその一次代謝産物であるフマル酸モノメチルはnuclear factor-E2関連因子2(Nrf2)の転写経路を活性化することが示されており、抗炎症作用に加え神経保護作用を併せ持つ可能性が示唆されている。スイスBasel大学病院のLudwig Kappos氏が、Lancet誌2008年10月25日号で報告した。
4群を比較するプラセボ対照無作為化第IIb相試験
研究グループは、再発寛解型多発性硬化症におけるBG00012の有効性および安全性の評価を目的に、二重盲検プラセボ対照無作為化第IIb相試験を実施した。2004年11月~2005年3月までに10ヵ国43施設から18~55歳の再発寛解型多発性硬化症患者257例が登録された。
これらの症例が、BG00012 120mgを1日1回投与する群(64例)、同120mgを1日3回投与する群(64例)、同240mgを1日3回投与する群(64例)あるいはプラセボ群(65例)に無作為に割り付けられ、24週間の治療が行われた。プラセボ群の患者は、安全性評価のための24週の延長期間中にBG00012 240mg 1日3回投与による治療を受けた。
主要評価項目は、12、16、20、24週の脳MRI所見上の新規ガドリニウム増強病変数とした。付加的評価項目として、24週時における新規ガドリニウム増強病変の累積数(4~24週)、新規あるいは増大したT2強調画像高信号病変、新規T1強調画像低信号病変、および年間再発率について検討した。解析は有効性評価が可能な症例で行い、安全性および耐用性の評価も実施した。
新規ガドリニウム増強病変数が有意に低下、再発率も改善傾向に
12~24週の新規ガドリニウム増強病変数の平均値は、プラセボ群の4.5個に対し240mg 1日3回投与群は1.4個と69%低下した(p<0.0001)。また、240mg 1日3回投与群は新規あるいは増大したT2強調画像高信号病変(p=0.0006)、新規T1強調画像低信号病変(p=0.014)の数もプラセボ群に比し有意に低下した。
年間再発率は、プラセボ群の65%に対しBG00012投与群は44%と32%低下したが有意差は認めなかった(p=0.272)。プラセボ群に比べBG00012投与群で多く見られた有害事象は、腹痛、顔面潮紅、ホットフラッシュなどであった。BG00012投与群に見られた用量依存性の有害事象は、頭痛、疲労感、灼熱感であった。
著者は、「BG00012の抗炎症効果と良好な安全性プロフィールが確認された。現在、より多くの症例を対象とした長期の第III相試験がいくつか進められている」としており、「これらの試験で同等の再発抑制効果が示されれば、経口薬で投与が簡便なBG00012は、注射薬による治療が困難な症例の導入治療となる可能性がある」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)