これまで明らかにされていなかった、閉経後女性の性欲低下に対するテストステロン投与の有効性と安全性について、モナッシュ大学のSusan R. Davis氏(オーストラリア)ら研究グループによって行われた二重盲検プラセボ対照試験の結果が報告された。NEJM誌2008年11月6日号より。
テストステロン投与群で性的満足の回数・欲求とも増加
エストロゲン補充療法を受けていない閉経後性的欲求低下障害と診断された女性814例を対象に、150μg/日または300μg/日の2種類のテストステロンパッチとプラセボを、無作為に割り付け、52週間にわたって投与が行われた。
有効性に関しては24週まで、安全性に関しては52週まで評価され、参加者のサブグループはさらに1年間経過観察された。
主要エンドポイントは、ベースライン時と比べて21~24週の、満足に至った性的エピソードの回数がどれだけ増えたかとした。
結果、満足できた性的エピソードの頻度は、プラセボ群(0.7回)よりテストステロン300μg/日投与群(2.1回)で有意に高かった(P<0.001)。150μg/日投与群では有意差はなかった(1.2回、P = 0.11)。
プラセボ群と比較して、テストステロンを投与した両群で、性欲増加(300μg/日 P<0.001、150μg/日 P = 0.04)、苦痛の減少(300μg/日 P<0.001、150μg/日 P = 0.04)がみられた。
性機能は向上したが、長期投与による副作用は未解明
アンドロゲン作用による有害事象(主に望ましくない発毛)は、テストステロン群300μg/日投与群で最も高く30.0%、150μg/日投与群24.7%で、プラセボ群(23.1%)より高かった。
テストステロンを投与された群の4例で乳癌が診断されたが、プラセボ投与群で乳癌と診断された例はなかった。4例のうちの1例は試験期間の最初の4ヵ月で乳癌と診断され、1例はランダム化を受ける前から症状があったことが後でわかった。
これらの結果から研究グループは、「閉経後女性の性機能は、テストステロン300μg/日のパッチ投与で、劇的ではないが意味のある改善が得られた」と述べる一方、乳がんを誘発する可能性を含め、長期投与の影響は依然不明であるとまとめている。
(武藤まき:医療ライター)