薬物抵抗性側頭葉てんかんで、前頭側頭葉切除術が可能な人には、手術をすることで期待余命が5年ほど延長し、また生活の質も改善するようだ。米国コロンビア大学のHyunmi Choi氏らが、モンテカルロ・シミュレーションを用いた研究で明らかにしたもので、JAMA誌2008年12月3日号で発表した。なお、てんかん患者のおよそ20~40%が、薬物抵抗性だという。
モンテカルロ・シミュレーションで1万回模擬
Choi氏らは、前頭側頭葉切除術の合併症やてんかんの状態などを盛り込んだ、モンテカルロ・シミュレーション・モデルを用い、1万回の模擬を繰り返した。
モデルの対象とした患者は、少なくとも2種の抗痙攣薬に抵抗性のある難治性部分発作の人で、前頭側頭葉のてんかん誘発部位が特定できた人とした。平均年齢は35歳(標準偏差11歳)。
前頭側頭葉切除術で期待余命が5年延長
シミュレーションの結果、モデル対象患者の場合、手術を受けることで、薬物治療を続けるよりも期待余命が5.0年(95%信頼区間:2.1~9.2)延長した。シミュレーションの100%で、手術をしたほうが薬物治療を続けるよりも結果が良好でもあった。
また、生活の質で補正を行った生存年数(QALYs;quality-adjusted life-years)で期待余命を計算したところ、前頭側頭葉切除術を行うことで、7.5QALY(95%信頼区間:-0.8~17.4)の延長が見られた。手術をすることで、障害の原因となるてんかんを発症せずに過ごす年数が増えることなどから、シミュレーションの96.5%で、手術をしたほうが結果は良好だった。
また、同モデルによると、手術をせずに薬物治療を続けた場合の平均期待余命は27.3年(95%信頼区間:24.1~30.5)で、一般の同44.3年よりも15年以上短いことも示されている。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)