イルベサルタン、左室駆出率45%以上心不全患者のアウトカム改善せず

提供元:ケアネット

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公開日:2008/12/17

 



心不全患者の約半数では左室駆出率が少なくとも45%あるが、これら患者の予後を改善する治療法は示されていない。サンフランシスコ退役軍人メディカルセンターのBarry M. Massie氏らのI-PRESERVE研究グループは、これら心不全患者へのイルベサルタン(商品名:イルベタン、アバプロ)の治療効果について検証した。NEJM誌2008年12月4日号(オンライン版2008年11月11日号)より。

心不全患者4,128例をイルベサルタン投与群とプラセボ群に無作為割り付け




I-PRESERVE(Irbesartan in Heart Failure with Preserved Ejection Fraction Study)には、ニューヨーク心臓協会(NYHA)が定めた心不全の重症度分類によるクラスII、III、IVの60歳以上の心不全患者で、左室駆出率45%以上が確保されている患者4,128例が参加し、イルベサルタン300mg/日投与群、またはプラセボ投与群に無作為に割り付け追跡された。

主要評価項目は、全死因死亡および心血管疾患(心血管系を原因とする心不全、心筋梗塞、不安定狭心症、不整脈または脳卒中)による入院とし、副次評価項目は心不全による死亡、または心不全による入院、全死因死亡または心血管を原因とする死亡、そして生活の質とした。

主要転帰、副次転帰いずれも有意差は認められず




平均追跡期間は49.5ヵ月間で、742例のイルベサルタン群患者と763例のプラセボ群患者で主要複合転帰のイベントが起きた。イベント発生率は、イルベサルタン群が100.4/千人年、プラセボ群が105.4/千人年で、ハザード比0.95(95%信頼区間:0.86~1.05、P=0.35)で有意差は認められなかった。

全死因死亡率はそれぞれ52.6/千人年、52.3/千人年でハザード比は1.00(0.88~1.14、P=0.98)で、これも同様だった。

主要転帰をもたらした心血管系の原因による入院率についても、それぞれ70.6/千人年、74.3/千人年で、ハザード比は0.95(0.85~1.08、P=0.44)だった。他の事前に特定したアウトカムについても有意差は認められなかった。

このため研究グループは、イルベサルタンは左室駆出率が一定以上に保たれた心不全患者のアウトカムを改善しないと結論づけている。

(武藤まき:医療ライター)