カフェイン摂取は、妊娠中に消費される最も多い生体異物である。300mg/日以上のカフェイン摂取が低体重児出産のリスクを増大することが明らかにされているが、わずか141mg/日以上でもリスクを増大とするとの知見もあり、英国「食品中の化学物質に関する委員会(Committee on Toxicity of Chemicals in Food)」が2001年に発表した論文レビューに基づく見解でも、300mg/日以上が自然流産と関連している可能性があるとしながらエビデンスは不明としていた。加えて近年、摂取量よりもカフェイン代謝の変動が胎児発育遅延と密接に関わるとの研究報告も寄せられている。それら知見を踏まえ本論は、リード大学とレスター大学の2つのティーチングホスピタルを基点に参加者を募り行われた大規模な前向き観察研究「CARE Study」の結果で、BMJ誌2008年12月6日号(オンライン版2008年11月3日号)にて報告された。
妊娠8~12週の低リスク妊婦2,635人のカフェイン習慣と出生時体重を調査
CARE Studyは、2003年9月から2006年1月に参加を募った18~45歳13,071人のうち、同意を得た妊娠8~12週の低リスク妊婦2,635人が参加し調査された。
妊娠(受胎)前4週から出産時までのカフェイン摂取量(<100、100~199、200~299、≧300;mg/日)を、公認された評価ツール(リード大学作成の習慣性を問うアンケート、各製造メーカー公表のカフェイン成分値など)を用いて定量化し評価。アンケートは、カフェイン摂取が食事性からかOTCからかがわかるものとなっており、潜在的交絡因子(喫煙、アルコール摂取、つわり等)の詳細も評価できるものだった。
またカフェイン半減期(クリアランスの代用値として)の評価をカフェイン負荷試験で実施。
喫煙評価は自己申告および唾液ニコチンテストで、アルコールは自己申告で評価。主要評価項目は、アルコール飲酒、喫煙で補正した出生時体重に基づく胎児発育遅延の有病率とした。
妊娠したら減らせばよいというものではない
胎児発育遅延の有病率は全体で13%(343/2635)。妊娠中のカフェイン消費量と胎児発育遅延との関連オッズ比(対<100mg/日)は、「100~199mg/日」1.2、「200~299mg/日」1.5、「≧300mg/日」1.4だった(P<0.001)。200mg/日以上摂取で、約60~70gの体重減が確認された。
平均カフェイン消費量は159mg/日。妊娠初期に減少し妊娠末期に増大する傾向が確認された(妊娠前238mg/日から5~12週に139mg/日に低減し持続、妊娠末期に153mg/日まで徐々に増大)。なお、本研究対象のカフェイン摂取は、お茶(tea)からが62%となっている。
妊娠前≧300mg/日を妊娠初期に<50mg/日に減らした妊婦と、出産までずっと≧300mg/日だった妊婦との出生児体重の差は161gあった。
またカフェインと胎児発育遅延との間の関連は、カフェイン半減期が急速だった妊婦のほうが、緩徐だった妊婦より強かった(P=0.06)。
研究グループは、「妊娠中のカフェイン摂取は、胎児発育遅延のリスク増加と関連する。その関連は妊娠初期から出産時まで及ぶ。本研究で、カフェイン摂取量が多いほどリスクが必ずしも増すということではないこと、一方で100mg/日未満の摂取がリスク低下と関連すること、また妊娠を予定している女性に対する適切なアドバイスが、妊娠前および妊娠中のカフェイン摂取を減らすことになることが明らかになった」と結論している。