80歳以上男性の心血管疾患とがん発病率は?

提供元:ケアネット

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公開日:2008/12/26

 



先進国で主要な疾患および死因となっている心臓病、脳卒中、がんについて、80歳以上の高齢男性の傾向を、ブリガム&ウィメンズ病院(アメリカ)のJane A Drive氏らが、Physicians’ Health Studyに参加した米国男性医師2万2,048人を対象に調査を行った。これまでこれら疾患の80歳以降の発病率は明らかになっておらず、特に90歳代、100歳代に関する研究はほとんどなかった。BMJ誌2008年12月13日号(オンライン版2008年12月9日号)より。

心血管疾患は死亡時まで未発見?
 がんは90歳代になると検診発見数が減少




Physicians’ Health Studyは、心血管疾患とがんの一次予防を目的とする無作為化試験(アスピリンとβカロチンの比較)で、1982年時点で40~84歳、心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中)やがんがなかった男性医師が参加し行われた。

Drive氏らは、参加者の23年後の心血管疾患およびがん発生率を追跡調査。各イベント発症の確認ができたのは心血管疾患3,252例、がん5,400例だった。

心血管疾患の発病率は、100歳でも増大が継続していた(3,110/10万人年)。ただ80歳以降では、死亡時に心血管疾患と診断されていることが多いようだった。

対照的にがんの発病率は、40~49歳(160/10万人年)から80~89歳(2,555/10万人年)までは着実に増大していたが、90~99歳(2,246/10万人年)で減少に転じていた。これは、90~99歳では検診で発見されたがん症例数が大きく落ち込んだことによる。検診で発見されなかったがんだけを見ると、100歳時まで右肩上がりに増大していた。

非補正累積発生率は過大に見積もって、心血管疾患は16%、がんは8.5%。生涯リスクは40歳時点と90歳時点それぞれで、心血管リスクは34.8%、16.7%、がんは45.1%、9.6%と算出された。

高齢者の疾患リスクは老年症候群を考慮する必要がある




Drive氏は、心血管疾患について、多くが死亡時診断であったことを取り上げ、「一方のがん発病率が減少していたのは、検診で発見される症例が減ったからで、それも合わせ考えると、80歳以降の高齢者は未確定診断の疾患を相当数有していることが示唆される。また、生涯リスクはいずれも100歳代ではほぼ横ばいになった。これは、疾患発見や症状の訴えが減り、疾患への抵抗性が増すためではないだろうか。高齢者の疾患リスクを正確に評価するには、死亡競合リスク(未確定診断の疾患が体調を脆弱にするような老年症候群:geriatric syndromes)を補正して検討する必要がある」と結論した。