進行前立腺癌の新たな標準治療が確立された:SPCG-7/SFUO-3試験

提供元:ケアネット

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公開日:2009/02/05

 



進行前立腺癌の治療では、内分泌療法に放射線療法を追加すると、内分泌療法単独に比べ前立腺癌による死亡率が半減し、全死亡率も有意に低下することが、北欧で実施された無作為化第III相試験(SPCG-7/SFUO-3試験)で示された。高リスクの前立腺癌では、内分泌療法と放射線療法の併用が有効なことを示唆する報告がいくつかあるが、その効果は確立されていなかった。スウェーデンUmea大学のAnders Widmark氏が、Lancet誌2009年1月24日号(オンライン版2008年12月16日号)で報告した。

内分泌療法+放射線療法併用と内分泌療法単独を比較




研究グループは、進行前立腺癌に対する放射線療法の効果を評価するために、内分泌療法+放射線療法と内分泌療法単独を比較する第III相試験を行った。病態が進行した症例には去勢術を施行した。

対象は、75歳以下、PS良好、臨床病期T1b~T2/G2~G3/T3、WHO grade 1~3、前立腺特異抗原(PSA)<70ng/mL、リンパ節および他臓器への転移のない症例とした。

1996年2月~2002年12月までに、ノルウェー、スウェーデン、デンマークの47施設に875例が登録され、内分泌療法+放射線療法併用群に436例が、内分泌療法単独群に439例が割り付けられた。

内分泌療法は、アンドロゲン遮断療法を3ヵ月施行したのち、フルタミドの継続投与を行った。1次評価項目は、前立腺癌特異的な死亡率とした。

前立腺癌特異的な10年死亡率、全死亡率がともに有意に低下




フォローアップ期間中央値7.6年の時点で、前立腺癌が原因で死亡した症例は内分泌療法単独群が79例、放射線療法併用群は37例であった。前立腺癌特異的な10年累積死亡率は、単独群の23.9%に対し併用群は11.9%と有意に良好であった[絶対リスク低下率:12.0%(95%信頼区間:4.9~19.1)、相対リスク:0.44(95%信頼区間:0.30~0.66)、p<0.001]。

10年累積全死亡率は、単独群の39.4%に対し併用群は29.6%と有意に優れていた[絶対リスク低下率:9.8%(95%信頼区間:0.8~18.8)、相対リスク:0.68(95%信頼区間:0.52~0.89)、p<0.004]。

10年累積PSA再燃率は、単独群では74.7%と高く、併用群の25.9%に比べ実質的に増加していた[絶対リスク低下率:48.8%(95%信頼区間:40.4~57.2)、相対リスク:0.16(95%信頼区間:0.12~0.20)、p<0.001]。5年後の尿路、直腸および性機能の問題の頻度は、併用群でわずかに高かった。

SPCG-7/SFUO-3試験の研究グループは、「局所進行あるいは高リスク局所前立腺癌においては、内分泌療法に局所放射線療法を追加すると、内分泌療法単独に比べ前立腺癌特異的な10年累積死亡率が半減し、全死亡率も実質的に低下した。副作用リスクは十分に許容できるものであった」と結論し、「これらのデータをふまえ、内分泌療法+放射線療法は進行前立腺癌に対する新たな標準治療とすべきである」としている。

(菅野守:医学ライター)