高齢の心不全患者に対し、N末端脳型ナトリウム利尿ペプチド(Nt-BNP)値を指標にした集中治療を行っても、症状による治療を行った場合と、アウトカムは同等であることがわかった。これまでに、Nt-BNP値による治療がアウトカムを改善することを示す研究結果があるものの、そうした研究は小規模で、若い患者を対象にしていた。これは、スイスBasel病院のMatthias Pfisterer氏らの研究で明らかになったもので、JAMA誌2009年1月28日号で発表した。
うっ血性心不全の約500人を18ヵ月追跡
同氏らは、60歳以上のうっ血性心不全の患者499人を、無作為に2群に分け、一方にはNt-BNPを指標にした集中治療を、もう一方には症状に基づく治療を行った。被験者は、収縮期低下による心不全(心駆出率45%以下)で、ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類Ⅱ以上、1年以内に心不全による入院があり、Nt-BNP値が正常上限の2倍以上だった。試験は2003~08年にかけてスイスとドイツの外来医療機関15ヵ所で行われ、追跡期間は18ヵ月だった。
無入院の生存率、QOLともに両群に有意差なし
その結果、無入院の生存率は、Nt-BNP群と対照群とでは同等だった(41%対40%、ハザード比:0.91、95%信頼区間:0.72~1.14、p=0.39)。被験者の生活の質(QOL)は追跡期間中に改善したが、両群に差は見られなかった。
2次エンドポイントである、心不全による入院のない生存率は、Nt-BNP群で72%と、対照群の62%に比べて有意に高率だった(ハザード比:0.68、95%信頼区間:0.50~0.92、p=0.01)。
さらに年齢別で見てみると、60~75歳では、Nt-BNP群の方が対照群よりアウトカムが改善していたが、75歳以上では同改善が見られなかった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)