出産後2週間以内に産婦の13%が産後うつ病にかかるとの報告があり、特に、対人関係の希薄な場合に産後うつ病発症リスクが高いことが知られている。逆に言えば、リスクの高い女性を対象に介入を行えば、高い予防効果が得られるのではないか。トロント大学(カナダ)C-L Dennis氏らの研究グループが行った報告が、BMJ誌2009年1月31日号(オンライン版2009年1月15日号)に掲載された。
産後うつ病のハイリスク群に電話によるピアサポートを実施
この研究は、出産後のうつ病予防策として、電話によるピアサポートの有効性を評価する目的とし、カナダ・オンタリオ州の7つの保健区域を対象に多施設無作為化対照試験として行われた。
参加者は、分娩後2週目の女性で、Edinburgh postnatal depression scale(EPDS、
http://www.patient.co.uk/showdoc/40002172/)により産後うつ病のハイリスク群とされた者(最高スコア30点、10点以下は正常、13点以上は産後うつ病と判定)。看護師が2万1,470人の女性にウェブを使ってアプローチ、1万4,101人がEPDSスクリーニングを完了、そのうち、スコアが9点以上の1,740人をピックアップし、最終的に701人の適格者を募った。
参加者はインターネットを介して、介入群と対照群に無作為化され、介入群には通常のケアに加えて、産後うつ状態を軽減するために電話による母親対母親のピアサポートを実施し、対照群には通常のケアのみを行った。ピアサポートは無作為化後48~72時間内に実施された。ピアサポートを行ったのは地域の母親ボランティアで、産後抑うつを経験し、現在は回復していて、4時間の研修を受けた者に限られた。
主要評価項目は、EPDS、抑うつ臨床面接、不安判定基準、UCLA孤独スケール、保健サービスの利用とした。
介入群のうつ状態は対照群の半分に
評価は看護師が、分娩後12週目に613人、24週目に600人(概ね85%以上)の対象を電話フォローし行った。
その結果、12週目にEPDSスコアが12点以上だったのは、介入群が14%(40/297)に対し、対照群では25%(78/315)とほぼ2倍の差がついていた(χ2=12.5、P<0.001)。介入群では母性不安と正の傾向が見られたが、孤独や保健サービスの利用ではその傾向が現れなかった。
ピアサポートを受け、その経験を評価した介入群の221人のうち、80%以上は満足しており、このサポートを友人にも勧めると回答した。
これらからDennis氏は、「電話によるピアサポートは、ハイリスクの女性の産後うつ病予防に効果がある」と結論づけた。