重度の冠動脈疾患に対しては冠動脈バイパス術(CABG)が標準治療とされてきたが、近年は急速に、薬剤溶出ステントを用いた経皮的冠動脈形成術(PCI)の施行が増えている。果たしてPCIが標準治療と成り得るのか。冠動脈3枝病変または左冠動脈主幹部病変(またはその両方)を有する患者を対象に、PCIとCABGを比較したSYNTAX試験の結果報告が、NEJM誌2009年3月5日号(オンライン版2009年2月18日号)にて発表された。
患者1,800例を無作為割り付けし、比較
試験対象患者は1,800例。全員これまでにCABGまたはPCIを受けたことがなく、また心臓外科医とインターベンション専門医によって、どちらの術式でも同程度の血行再建が得られると判断されていた。無作為化割り付けの比率は1対1。
主要エンドポイントは、無作為化後12ヵ月間の、心臓または脳血管の重大な有害イベント(全死因死亡、脳卒中、心筋梗塞あるいは再度の血行再建)とし、2群間の非劣性試験が実施された。なお解剖学的特徴または臨床状態から、2つの治療選択肢のうち1つだけが有益と判断された患者はランダム化から除外され、CABGまたはPCIのいずれかで登録された。手術前特性は2群間で同程度だった。
1年後の複合エンドポイントが、CABGのほうがより低い
12ヵ月後の重大な心臓または脳血管イベント発生率は、PCI群のほうが有意に高かった(CABG群12.4%、PCI群17.8%、P=0.002)。主なイベントは再度の血行再建(同5.9%対13.5%、P<0.001)で、結果的に非劣性試験の判定基準は満たされなかった。
12ヵ月後の死亡率と心筋梗塞の発生率は2群間で同程度だったが、脳卒中に関してはCABG群のほうが有意に高かった(2.2%対PCI群0.6%、P = 0.003)。
これらから「術後1年時点の重大な心臓・脳血管イベントの複合エンドポイント発生が、PCIよりもCABGのほうが低く、3枝病変あるいは左冠動脈主幹部病変の標準治療は依然としてCABGであると結論できる」とまとめている。
(朝田哲明:医療ライター)