NHSスコットランドのLaurence Gruer氏らが、男性・女性それぞれの社会的地位と喫煙率が生存率にどのような影響をもたらすのか、イギリス・スコットランド地方で行った長期間にわたるコホート観察研究の結果が、BMJ誌2009年3月14日号(オンライン版2009年2月17日号)にて発表されている。編者によれば、これまでイギリスでは、1930年以前生まれの高齢のイギリス人男性医師に関する調査で、喫煙習慣がある人の生存率が大幅に低かったことや、また社会的地位が低い人々の間で、喫煙率の高さが健康格差の重大な一因であり、社会的地位と結びついていることなどが明らかにされていた。
喫煙群・非喫煙群を28年間追跡観察
本研究は、スコットランド中西部の2つの町、レンフルーとペイズリーで行われた。参加者は1972~1976年にかけて募集された45~64歳の女性8,353人と男性7,049人で、この年齢層の集団のほぼ80%をカバー。参加者は、性(男、女)、喫煙状態(喫煙中、過去に喫煙、非喫煙)、社会的地位(職業分類に基づき「クラスI+II」「クラスIII」のノンマニュアル層、「クラスIII」のマニュアル層、「クラスIV+V」)もしくは居住地カテゴリー(deprivation category)によって24集団に分けられた。
主要評価項目は、年齢と他のリスクファクターで補正した各群の相対死亡率とし、 28年時点のカプラン・マイアー生存曲線と生存率で表した。
社会的地位よりも喫煙の有無が生存率に影響
28年間の死亡は、女性では7,988人中4,387人、男性は6,967人中4,891人だった。
死亡率が最も低い「クラスI+IIの非喫煙女性群」と比較して、「喫煙群」の補正後相対死亡率は1.7(95%信頼区間:1.3~2.3)から4.2(3.3~5.5)までにわたった。「過去に喫煙群」の死亡率は、「非喫煙者群」よりも「喫煙者群」の死亡率と近似だった。
28年時点の年齢補正後生存率を、社会的地位が高い順に見ると、女性非喫煙者では65%、57%、53%、56%、女性喫煙者では41%、42%、33%、35%、男性非喫煙者では53%、47%、38%、36%、男性喫煙者では24%、24%、19%、18%だった。居住地カテゴリーによる解析からも同様の結果が得られたという。
これらから研究グループは、男女の性差や社会的地位にかかわらず、非喫煙者は喫煙者よりはるかに高い生存率を維持しているとともに、喫煙はそれ自体が社会的地位よりも大きな健康格差の原因であり、男性に対する女性の生存率の優位性をさえ無効にすると述べている。さらに、社会的地位の低い多くの喫煙者は、禁煙しない限り、地位・健康格差を是正する余地はないと結論づけている。