35歳より若く、現に高血圧、肥満、収縮機能不全を有する人は、心不全予防ターゲットとして重視すべきことが、カリフォルニア大学サンフランシスコ総合病院Kirsten Bibbins-Domingo氏らの疫学調査で明らかにされた。NEJM誌2009年3月19日号に掲載された本研究は、本来は若年世代の心不全発症の人種差を明らかにすることを目的とするもので、50歳未満では、黒人のほうが白人よりもかなり一般的に見られることが明らかにされている。
心不全発症者の4分の3は、40歳までに高血圧
調査は、ベースライン時18~30歳の黒人および白人の男女5,115例の、20歳以降の心不全発症率を前向きに評価したもの。Coxモデルを用いて、心不全による入院あるいは死亡の予測因子が調べられた。
20歳以降の心不全発症者は27例。発症年齢平均(±SD)は39±6歳で、1例のみ白人で他は黒人だった。
50歳以前の累積発症率は、黒人女性1.1%(95%信頼区間:0.6~1.7)、黒人男性0.9%(0.5~1.4)、白人女性0.08%(0.0~0.5)、白人男性0%(0~0.4)だった。黒人参加者と白人参加者の比較はP=0.001。
18~30歳黒人の平均15年後の心不全発症の独立予測因子は、「拡張期血圧が高い」(10mmHg当たりハザード比:2.1)「BMIが高い」(5.7単位当たりハザード比:1.4)「LDL-Cが低い」(13.3mg/dL〈0.34mmol/l〉当たりハザード比:0.6)「腎疾患を有する」(ハザード比:19.8)だった。
また、心不全を呈した参加者の4分の3は、40歳までに高血圧を有していた。
23~35歳時に心エコー検査で収縮機能低下が認められた参加者も、心不全発症との独立した関連が認められた。収縮機能低下の参加者の平均10年後のハザード比は36.9、境界域の者は同3.5だった。
なお、心筋梗塞、薬物使用、アルコール摂取は、心不全リスクと関連していなかった。
(武藤まき:医療ライター)