PSA検診で前立腺癌死亡率を2割減少:ヨーロッパでの無作為化試験の結果

提供元:ケアネット

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公開日:2009/04/08

 



前立腺癌のPSA検診を行うことで、前立腺癌による死亡率を約2割引き下げることができるとする研究結果が出た。これは、ヨーロッパ7ヵ国の18万2,000人を対象に行った、前向き無作為化試験の結果で、オランダErasmus Medical CenterのFritz H. Schroder氏らが、NEJM誌2009年3月26日号(オンライン版2009年3月18日号)で発表した。
 

PSAは前立腺癌の腫瘍マーカーだが、PSAスクリーニング検査の有効性については、議論が分かれている。同一号のNEJM誌では、米国の研究グループが同試験結果と相反する結果を報告しており、有効性をめぐる議論の決着には、まだ時間がかかるようだ。

18万2,000人を中央値9年追跡




同研究グループは、ヨーロッパ7ヵ国に住む50~74歳の男性を、無作為に2群に分け、一方にはPSA検診を平均4年に1回の割合で行った。もう一方の対照群には、同検診を行わなかった。事前に設定した中核年齢層である55~69歳の被験者は、16万2,243人だった。主要アウトカムは、前立腺癌による死亡率。追跡期間の中央値は9年だった。

前立腺癌による死亡率はPSA検診群で2割減




SA群のうちPSA検診を最低1回受診したのは、82%だった。追跡期間中の前立腺癌の累積罹患率は、PSA群が8.2%、対照群が4.8%だった。

PSA群の対照群に対する前立腺癌死亡率比は、0.80(95%信頼区間:0.65~0.98、補正後p=0.04)だった。死亡件数の、両群の絶対リスクの差は、0.71例/千人だった。

前立腺癌を1人予防するには、スクリーニング1,410人は行う必要があること、また前立腺癌の治療は48人を要するという計算だった。

なお、PSA群のうちPSA検診を受けなかった人を除き対照群と比較したところ、前立腺癌死亡率比は、0.73(95%信頼区間:0.56~0.90)とさらに低下した。

同研究グループは、PSA検診は前立腺癌の死亡率を20%低下するが、過剰診断のリスクが高いと結論づけている。

(當麻 あづさ:医療ジャーナリスト)