皮膚損傷後の瘢痕治療にTGFβ3製剤が有効

提供元:ケアネット

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公開日:2009/04/23

 



transforming growth factor β3(TGFβ3)製剤であるavoterminは、皮膚損傷後の瘢痕を加速度的、かつ恒久的に改善する可能性があることが、イギリスManchester大学生命科学部門のMark W J Ferguson氏らが実施した、3つの臨床試験の結果から示唆された。TGFβ3はおもにケラチノサイトと線維芽細胞から合成された皮膚の形態形成因子であり、20年の研究実績があるという。既存の皮膚瘢痕の治療法は経験的なものばかりで、無作為化対照比較試験よるエビデンスを有するものはない。Lancet誌2009年4月11日号掲載の報告。

一人の対象者内でさまざまな用量の治療薬とプラセボを比較




研究グループは、健常者を対象に3つの二重盲検プラセボ対照無作為化試験(1つの第I/II試験、2つの第II相試験)を実施した。

対象者の上腕に1cm長の全層皮膚切開を行い、切開前と24時間後にavotermin(線状の創縁1cm当たり0.25~500ng/100μL)を皮内投与した。切開部位を、avoterminあるいはプラセボ(もしくは標準的な創傷治療)を投与する群に無作為に割り付け、一人の対象者内でavoterminとプラセボ(もしくは標準的な創傷治療)の比較を行った。

主要評価項目は瘢痕形成の肉眼的評価とし、2つの試験では創傷後6ヵ月と12ヵ月後に、もう1つの試験では創傷後6週~7ヵ月にかけて評価を行った。治療医、対象者、瘢痕の評価者には当該創傷部位の治療法は知らされなかった。

治療群でVAS、総瘢痕スコアが有意に改善




2つの試験では、avotermin 50ng/100μL群の100mm視覚アナログスケール(VAS)の中央値が、プラセボ群に比べ、6ヵ月の時点で5mm(p=0.001)、12ヵ月後には8mm(p=0.0230)改善した。もう1つの試験では、avoterminのすべての濃度の群において総瘢痕スコアが、プラセボ群に比し有意に改善し、平均改善度は、最低用量(5ng/100μL)群の14.84mmから最高用量(500ng/100μL)群の64.25mmまで、用量依存性に高くなった。

真皮網状層のコラーゲン線維の異常が25%以下の症例は、プラセボ群が33%(5例)であったのに対し、avotermin 50ng/100μL群は60%(9例)であった。avotermin 500ng/100μL群では、わずか6週後にはVASが16.12mmも改善した。

創傷部位の有害事象は、avotermin群とプラセボ群で同等であった。紅斑および浮腫の頻度はプラセボ群よりもavotermin群で高かったが、一過性のものであり、いずれも正常な創傷治癒と見なされた。

著者は、「avoterminは瘢痕を加速度的、かつ恒久的に改善する可能性がある」と結論し、「avoterminの予防投与は健康な皮膚の再生を促進し、瘢痕の外見を改善する可能性があり、周術期における低用量の局所投与は十分に耐用可能で簡便に施行できる」としている。

(菅野守:医学ライター)