熱いお茶を飲む人ほど食道がんのリスクが高いことが、イラン北部のGolestan州での大規模な住民ベースの症例対照研究の結果、報告された。同地域は世界的にも食道有棘細胞がんの発病率が高い地域の1つだが、欧米とは異なるユニークな疫学的特徴があること――主要なリスク因子とされる喫煙率や飲酒率が低く、また発病率に男女差があまりない――で知られていた。テヘラン大学(イラン)シャリーアティー病院消化器疾患リサーチセンターのFarhad Islami氏らは、同地域が、食道がん発病率の低い地域と比べるとお茶がとても飲まれていて、しかも熱いお茶が好まれているという特徴に着目し、飲茶パターン・温度と、食道がん発病との関連について調査を行った。BMJ誌2009年4月11日号(オンライン版2009年3月26日号)より。
4万8,582人が参加した住民ベースの症例対照研究
住民ベースの症例対照研究は、飲茶パターン(緑茶と紅茶各々の飲茶量、お茶を注いでから飲むまでの時間)、飲茶温度[症例群は主観的評価(ぬるいor温かいお茶、熱いお茶、とても熱いお茶)、対照群は温度を実測(75℃、70℃、以下-5℃ずつで普段飲んでいるお茶の温度を計測)]などが調べられた。
症例群は同地域唯一の胃腸専門クリニックで集められ、2003年12月~2007年4月に、300例が組織学的検査で食道有棘細胞がんが認められた。これらと、住民コホート(4万8,582人が参加)で対照群としてマッチした571例とで検討が行われた。
とても熱いお茶を飲んでいる人の食道がんリスクは8.16倍増
住民コホート参加者のほぼ全員(98%)が紅茶を飲む習慣があった。飲茶量は1日平均1リットル以上。温度は、60℃未満が39.0%、60~64℃が38.9%、65℃以上が22.0%(うち70℃以上は5.4%)だった。
温度と食道がんリスクとの関連について、ぬるいor温かいお茶を飲んでいる人のリスクを基準とした場合、熱いお茶を飲んでいる人は2.07倍(95%信頼区間:1.28~3.35)、とても熱いお茶を飲んでいる人は8.16倍(3.93~16.9)に上った。
同様に、お茶を注いでから4分以上経ってから飲む人を基準にした場合、2~3分で飲む人の食道がんリスクは2.49倍(1.62~3.83)、2分未満で飲む人は5.41倍(2.63~11.1)と有意な増大が見られ、熱いお茶を飲むことと食道がんは強く関連しているとIslami氏は結論している。