AIDS非発症HIV-1感染者に対する抗レトロウイルス薬療法は、CD4細胞数が350/μLまで低下する前に開始すべきことが、When To Start Consortiumによる共同解析で明らかとなった。HIV-1感染者にどのタイミングで併用抗レトロウイルス薬療法を開始すべきかという重要課題を解決するには、CD4細胞数の閾値の下限を決定する必要があるが、これを目的とした無作為化対照比較試験はいまだなされていないという。同研究グループのJonathan A C Sterne氏(イギリスBristol大学社会医学科)らが、Lancet誌2009年4月18日号(オンライン版2009年4月9日号)で報告した。
コホートのデータを用いてCD4細胞数の範囲とAIDS発症率、死亡率の関連を評価
When To Start Consortiumの研究グループは、無作為化試験が存在しない状況で、HIV-1感染者にどのタイミングで併用抗レトロウイルス薬療法を開始すべきかという疑問に答えるために、18のコホート研究のデータの解析を行った。
18試験中の15試験に登録されたHIV感染者で、前治療として抗レトロウイルス療法を受けていない患者のうち、1998年1月1日以降に併用抗レトロウイルス療法を開始したもの(AIDS非発症、CD4細胞数<550/μL、注射薬物の使用歴なし)が解析の対象となった。
併用抗レトロウイルス療法導入前(1989~95年)のコホートに登録された患者のデータを用いて、未治療例におけるCD4細胞数の変動幅を推算し、AIDSの発症状況および死亡率の評価を行った。また、治療開始のタイミングが遅い場合(待期的治療)と早い場合(即時的治療)で、CD4細胞数の範囲とAIDS発症率、死亡率にどのような関連があるかを評価した。
CD4細胞数350/μLを閾値下限とすべき
併用抗レトロウイルス療法導入以前にフォローアップが行われた2万1,247例と、併用療法で治療が開始された2万4,444例のデータが得られた。
CD4細胞数が251~350/μLに低下してから治療を開始した患者では、351~450/μLの段階で治療を始めた場合に比べAIDSを発症して死亡する率が有意に高かった(ハザード比:1.28)。
CD4細胞数の閾値が低下するに従って、待期的治療による有害事象が増加した。待期的治療の死亡率は、即時的な治療法に比べ高かった。
著者は、「これらの結果により、HIV-1感染者に対する抗レトロウイルス薬療法開始の指標として、CD4細胞数350/μLを閾値の下限とすべき」と結論し、「この知見は治療を開始するタイミングの決定に役立つだろう」としている。
(菅野守:医学ライター)