非経口の投薬ミスは、ICUでは日常的に起きており、深刻な医療安全の問題であることが、ESICM(European Society of Intensive Care Medicine)の質改善研究グループによって行われた、27ヵ国113施設のICUを対象とした多国籍前向き研究の結果、明らかになった。BMJ誌2009年4月18日号(オンライン版2009年3月12日号)掲載より。
27ヵ国113施設1,328例のICU患者に起きた投薬ミスを解析
本研究はICUでの非経口投薬ミスの、国際レベルでの傾向、特徴、寄与因子、予防措置について評価をすることを目的とし、スタッフの自己申告に基づく観察前向き24時間横断研究にて行われた。解析対象となった参加症例数は1,328例。
主要評価項目は、ミスによる影響の度合い、特徴分布、寄与因子分布、予防因子分布とされた。
臓器への障害は少なくとも1投薬ごとに起きている
投薬ミスは、患者441例に関わる861件、患者100人・日当たり74.5件が報告された。このうち4分の3は、「不作為の過誤(errors of omission)」だった。投薬治療ステージで被った投薬過誤による永続的な有害事象例および死亡例は、合わせて12例(対象全患者の0.9%)だった。
多変量ロジスティック解析の結果、臓器への障害は少なくとも1投薬ごとに起きている(オッズ比:1.19)、静脈注射時に起きている(yes対no:2.73倍)、非経口投薬の数が多いほど起きている(1非経口投薬増当たりオッズ比:1.06)、ICUでの定型的介入時(yes対no:1.50倍)、施設規模が大きいほど起きている(1ベッド増当たりオッズ比:1.01)、看護師が受け持つ患者が多いほど起きている(患者1人増当たりオッズ比:1.30)、ICU稼働率が増すほど起きている(10%増当たりオッズ比:1.03)ことが明らかになった。
一方で、投薬ミスは基本的なモニタリングが行われている場合は低かった(yes対no:0.19倍)。また、クリティカルなインシデントの報告システムがある場合(0.69倍)、看護師の交代時のルーチンチェックが確立している場合(0.68倍)、回転率が高い場合(1患者増当たりオッズ比:0.73倍)も、ミスは少なかった。
本報告を行ったウィーン大学救急部門のAndreas Valentin氏は、「重症患者のケアが複雑になるほど、ミスを報告するシステムやチェック体制を組織的に整えることが、ミスを防ぐ最大の因子である」とまとめている。