2型糖尿病患者への強化血糖コントロールがもたらすアウトカム

提供元:ケアネット

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公開日:2009/06/04

 



2型糖尿病患者への強化血糖コントロール療法は、標準療法と比べて、冠動脈イベントの低下をもたらし死亡リスクも上昇しないことが、5つの前向き無作為化試験(UKPDS、PROactive、ADVANCE、VADT、ACCORD)のメタ解析の結果、報告された。強化血糖コントロール療法の有益性に関してはこれまで明らかにされていなかった。ケンブリッジ大学公衆衛生/プライマリ・ケア部門のKausik K Ray氏らによる本報告は、Lancet誌2009年5月23日号に掲載されている。

5つの前向き無作為化試験、被験者計3万3,040例のデータをメタ解析




解析した5つの前向き無作為化試験の被験者は、総勢3万3,040例に上る。Ray氏らは、各試験データから、非致死的心筋梗塞、虚血性心疾患(致死的・非致死的心筋梗塞)、脳卒中、全死因の死亡に関する情報を集め、ランダム効果モデルによるメタ解析を行った。臨床転帰の評価には各試験結果から算出したオッズ比を用い、試験間の統計的な異質性の評価(χ2乗、I 2乗)も行った。

非致死的心筋梗塞17%、虚血性心疾患15%低下




5つの試験(約16万3,000人・年)のイベント発生数は、非致死的心筋梗塞1,497例、虚血性心疾患2,318例、脳卒中1,127例、全死因死亡2,892例だった。また、平均HbA1cは、標準療法群よりも強化血糖コントロール群で、0.9%低かった。

強化血糖コントロールは、非致死的心筋梗塞については17%の低下(オッズ比:0.83、95%信頼区間:0.75~0.93)、虚血性心疾患については15%の低下(0.85、0.77~0.93)をもたらしていた。しかし、脳卒中(0.93、0.81~1.06)、全死因死亡(1.02、0.87~1.19)には、有意と言える影響を及ぼしてはいなかった。

Ray氏は、「総じて、強化血糖コントロールは標準療法と比べて、死亡リスクを上昇することなく冠動脈イベントの低下をもたらしていた。所見は、『血糖コントロールは心血管リスクの低下に有効』という知見に安堵をもたらすもの」と結論したが、至適な方法、速さ、HbA1cの減少範囲について、集団間での差異の可能性についても言及した。また、全死因死亡の低下について明白なベネフィットを立証できなかったことについて、「全死因死亡の低下については、脂質低下療法と降圧療法が有益であることが示唆された。これら治療が2型糖尿病患者の心血管イベントおよび全死因死亡の低下に重要であることを示す強いエビデンスと言える」と述べている。その上で、血糖コントロールを達成するための至適な方法を確立する必要性、HbA1cのガイドライン推奨値の整備について提言した。