食道腺がんに移行しやすいバレット食道、内視鏡的切除でリスクを減少

提供元:ケアネット

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公開日:2009/06/10

 



食道腺がんへの移行リスクが高い疾患として知られるバレット食道は、食道上皮の腸上皮化生を伴う。欧米の研究報告によると、慢性の逆流性食道炎患者の約10%に見られ、最近の住民スタディでは有病率1.6%、がん発病率は1970年代から500%以上増加、5年生存率は15%未満と高い致死率が報告されている。一方で、長期研究により、大半は非異形成か悪性度は低いままであることが明らかになってもいる。それでも悪性度の高い異形成に進行した場合、がん発病率は10%/人年以上で、現在まで異形成に対する最適な治療は明らかになっていない。米国ノースカロライナ大学食道疾患/嚥下センターのNicholas J. Shaheen氏らは、異形成を伴うバレット食道を、内視鏡的高周波アブレーションによって消失できるかどうか、それによってがん発病のリスクを低下することができるかどうかを多施設共同偽処置対照無作為化試験(米国内19施設)にて調査した。NEJM誌2009年5月28日号より。

異形成を伴うバレット食道患者127例を、偽処置を対照とし無作為化




被験者は、異形成(8cm以下)を伴う18~80歳の患者127例で、内視鏡的高周波アブレーションを施行する群(アブレーション群、84例)と偽処置施行群(対照群、43例)に無作為に割り付けられた。無作為化は、異形成の度合い(低群:64例、高群:63例)とバレット食道部位の長さ(4cm未満、4~8cm)で層別化し行われた。アブレーション群の施行は最大4回(基線、2、4、9ヵ月)。全患者は試験期間中、プロトンポンプ阻害薬esomeprazoleを1日2回40mg服用していた。

主要転帰は、12ヵ月後の異形成または腸上皮化成の完全な消失とした。

主要転帰に達した割合は、低度異形成患者群では、アブレーション群90.5%に対し対照群は22.7%(P<0.001)。高度異形成患者群では、アブレーション群81.0%、対照群19.0%で(P<0.001)で、いずれもアブレーション群のほうが高率だった。患者全体における腸上皮化成の完全な消失でも、アブレーション群が高く77.4%、対照群は2.3%だった(P<0.001)。

アブレーション群の食道がん移行は1.2%、対照群は9.3%




疾患進行および食道がんへの移行は、アブレーション群のほうがいずれも低く、疾患進行は3.6%対16.3%(P=0.03)、食道がん移行は1.2%対9.3%(P=0.045)だった。

なお有害事象に関しては、アブレーション群のほうが術後に胸痛が多く報告された。また、上部消化管出血1例、食道狭窄5例(6.0%)が報告された。

(朝田哲明:医療ライター)