米国における移民・難民の結核疫学調査

提供元:ケアネット

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公開日:2009/06/17

 



結核は、感染症死亡世界第2位で、発病率は1990年から2003年の間に世界的に増加した。WHOによれば、2005年の新規患者は世界で約880万人、うち84.1%がアジアおよびサハラ以南のアフリカからの報告だったという。一方、先進国の発病率も、こうした国からの移民・難民の影響を受けていると言われ、米国では、1年間の結核の新規患者の約6割が、外国生まれの人であり、その大半は、移民や難民と推定されるという(2007年調べ)。こうした外国生まれの人に対する結核予防対策を講じるため、米国疾病管理予防センター(CDC)のYecai Liu氏らは、詳細な疫学調査を実施した。NEJM誌2009年6月4日号より。

外国生まれの人の結核発病率は、米国内で生まれた人の9.8倍




2007年の米国における結核の新規患者数は1万3,293人で、そのうち57.8%が外国生まれの人だった。それら外国生まれの人の発病率は、米国生まれの人の9.8倍に上った(20.6例対2.1例/人口10万)。

米国には毎年、約40万人の移民、5万~7万人の難民が移住してきており、外国生まれで結核を発病した人の多くがそうした人々だと推定された。

海外でスミア陰性だった人のうち7%が移住後に発病




一方、CDCでは、移民や難民の移住後の結核に関する追跡調査とともに、海外スクリーニングのデータも収集している。Liu氏らは、それらデータを分析。1999~2005年の間の、移民者271万4,223人の海外スクリーニングデータから、スミア陰性例(胸部X線によって活動性結核が示唆されたが、喀痰スミアは3日連続で抗酸菌陰性)が合計2万6,075例、非活動性結核例(胸部X線によって臨床的に非活動性結核を示した症例)が2万2,716例だったことが明らかになった。これは、有病率がそれぞれ、961例/10万人(95%信頼区間:949~973例)、837例/10万人(826~848例)であることを意味する。

また同期間の、難民37万8,506人については、スミア陰性の結核は3,923例、非活動性の結核は1万0,743例で、有病率はそれぞれ、1,036例/10万人(1,004~1,068例)、2,838例/10万人(2,785~2,891例)であった。

これら海外スクリーニングデータと国内発症データを合わせると、海外ではスミア陰性と診断されていた人のうち7.0%が、米国に移住後、活動性肺結核と診断されており、また、非活動性結核と診断されていた人については、1.6%が移住後、活動性肺結核と診断されていた。

(武藤まき:医療ライター)